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漫画の話です。

小学生から高校生へ 幼馴染み二人の「幸せな蛇足」『ゆあまいん』の話

小学校以来の幼馴染みである舞と吉岡。腐れ縁が腐りすぎて、どうやって距離を詰めたものかと思い悩んでいた吉岡だけど、中学校の卒業式の日に同級生から背中を押され、なかば無理やり舞と恋人同士に。でも、良くも悪くも気を遣わなくて済んでいた今までの距離感と、ついでに舞のファンキーな父親のせいで、恋人になったはいいものの今度はどうそれを進展させればいいものやらと思い悩む。甘酸っぱい高校生二人(と頓狂なおっさん一人)の、幼馴染みラブストーリー……

ゆあまいん (バンブーコミックス)

ゆあまいん (バンブーコミックス)

ということで、むんこ先生の新刊『ゆあまいん』のレビューです。
実は本作は、全3巻で絶賛発売中の『まい・ほーむ』も後日談に当たるお話となっています。
まい・ほーむ 1 (バンブー・コミックス)

まい・ほーむ 1 (バンブー・コミックス)

そちらは、小学生・舞とその父親・史郎がメインとなっており(吉岡も友人として登場します)、物語としても家族の暗い部分などが前面に出てきたりもするため、ハートフルと呼ぶには少々もの悲しさのある作品だったのですが、本作は高校生になった舞と吉岡がつむぐ徹底的に甘酸っぱい物語なのです。記事タイトルで使った「幸せな蛇足」とは、コミックス帯の惹句なのですが、非常にナイスコピーだと思います。
この甘酸っぱさのどこがいいって、吉岡が、距離を詰めたいんだけどどうすればいいかわからなくてじたばたしながらも、ある一線を越えるとふっと真剣に、そして素直になる感じです。
たとえばこの試し読みの、p8「心臓の音 聞こえそう」みたいなやつですわ。他の友人といる時に見せる照れ隠しであるとか、自分の下心を隠そうとして出てくるどたばただとか、そういう表面に浮かび上がっていた感情がふっと剥がれ落ちて、むき出しの「好き」とか「大事にしたい」とかの気持ちが顔を出す、あの感じ。あのコマの中の空気の静かさ。お互いの好意が裸のままで向かい合ったときに、お互いが真面目になって、飾らない言葉を無造作に差し出すしかない感じ。それが、とてもよいのです。
自分の過去には絶対なかったっと断言できるあの感じ。まあ現実にあんなあまずっぺえ高校時代を送った人間が世の中の何%を占めているかわかったもんじゃありませんし、もしいたとしてもそいつらは敵なのでいいのですが、こんな私でも、否、私だからこそあの感じを欲するときがあるのです。人間だもの。
父親のファンキーさなんかがなんの説明もなく描かれているあたり、『まい・ほーむ』を知らない人にはちょっと?なところもあるでしょうが、まあそれはそれとして幼馴染みの恋物語としていいものがあります。あの舞ちゃんがこうなるとは、まったく時間とは劇薬ですね。ただ、いかにも高校生らしい下ネタは作風とミスマッチ感が否めないかしら。
むんこ先生の作品は、概して年齢が高めの作品の方が好みですね。『だって、愛してる』とか『メメ子ちゃん』とか。本作を読んで、ラインが高校生以上なんだとわかりました。


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