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『暗殺教室』「いつか」のために学ぶことの話

新刊発売とともにアニメ化&実写映画化という衝撃ニュースの飛び込んできた『暗殺教室』。

暗殺教室 10 (ジャンプコミックス)

暗殺教室 10 (ジャンプコミックス)

実写………?


一瞬嫌な感じによぎったのが『バトルロワイヤル』だったのですがまあそれはともかく。


さて、娯楽色が非常に強いにもかかわらず、「学ぶとは何か」「教えるとはどういうことか」を真摯に描いている本作。来月には英単語帳も発売するとのことですが、それを告知している表紙折り返しの作者コメントは

(前略)
学習本は、この連載が始まった当初から
どうしても出したかった悲願でした。
「ちゃんと学校の成績を上げてくれる先生」
が主役であるからには、ちゃんと勉強の役に立つ、
楽しく真面目な勉強グッズを作りたかったのです。
(中略)
宣伝になってしまい恐縮ですが、漫画家なりに、
学問をする人の役に立ちたい、
という気持ちは真剣です。
(後略)
(10巻 カバー折り返し)

と至極真面目。10巻でも、学ぶということについていくつか気になる話がありました。
第87話「吐きそうな時間」で、寺坂ら悪ガキグループがシロの手から離れたイトナの心を開こうと色々なところへ連れ回しました。ですが、イトナの勝利への執着を解くのは容易なことではなく、触手の発作を抑えることはできませんでした。暴走する触手による攻撃を恐れた村松らは慌ててその場から離れようとしましたが、寺坂だけはその場に留まり、触手の一撃をあえて受けた上で、イトナにこう言い放ちました。

吐きそーといや村松ん家のラーメン思い出した
あいつな あのタコから経営の勉強奨められてんだ
今はマズいラーメンでいい いつか店を継ぐ時があったら・・・ 新しい味と経営手腕で繁盛させてやれってよ 
吉田も同じ事言われてた 役に立つかもしれないって
なぁイトナ 
一度や二度負けた位でグレてんじゃねぇ 勝てりゃあいーじゃねーかよ
(10巻 p160,161)

寺坂の言った、というかそもそもは殺せんせーの言った「いつか」という言葉。これは特に義務教育段階で学問を修めるうえで、非常に重要な考え方だと思うのです。
以前書いた『銀の匙』の記事でも触れましたが、 義務教育における勉強は、将来すなわち必要になることを学ぶものです。将来役に立たないから数学は勉強しないだとか、古典の文法が何の役に立つかわからないとか、それは当然と言えば当然。将来何が役立つかわからないから、学んでおくと応用が利きやすい、別の言い方をすれば他の分野についての基礎的な考えとなる学問を若いうちに学んでおくのです。
彼らはまだ中学三年生。将来の夢はあっても、それが実現するかどうかはまだわからず、実現するとしてもまだまだ先の話。それに、将来の夢がどこかで変わることもあり得ます。今やっていることが役に立つかもしれない。だからとりあえず、学んでおけ。
もちろん役に立たないかもしれない。けれど、知識はいつどこでどういう風に役に立つのか、わかったものではありません。最近読んだ『アイデアのつくり方』という本で、こんな一節がありました。

イデア作成の基礎となる一般的原理については大切なことが二つあるように思われる。
(中略)
即ち以外の何ものでもないということである。
(p27,28)

アイデアのつくり方

アイデアのつくり方

著者のジェームス・W・ヤングは、かつてアメリカの広告業界で名を馳せた人物ですが、彼が言うには、アイデアを作り出すために五つの段階があるとのことです。
大ざっぱに言えばそれは、資料収集、収集した資料の咀嚼、感性の刺激、閃きの獲得、閃いたアイデアのブラッシュアップの五段階。その第一段階、すなわちもっとも基礎となる段階において得るとされる資料は大別して二つ、特殊資料(知識)と一般的資料(知識)となります。前者は、実際にアイデアを出したい対象についての具体的な資料(知識)で、後者はそれと直接の関係を持たない、社会に遍く存在する種々の資料(知識)です(同書では、「例えばエジプトの埋葬習慣からモダン・アートに至るまで」と例示しています)。
集められた二種類の資料は、第二、第三段階を経て、第四段階で初めてアイデアとしての具体的な形をとるのですが、特殊資料が「新しい組み合わせ」をとる時に、それらをつなぐ環となるもの、あるいはその組み合わせ方を示すものが一般的知識なのだと私は解釈しました。アイデアは専門バカでは生まれてこず、狭く深い知識と、浅く広い知識と、その両方が要求されるのだと。
さて、一般的知識は何かに対峙するに及んで初めて得ようとするものではありません。常日頃の生活の中でふとしたときに見知ったこと、不思議に思ったこと、疑問に感じたことなどを掘り下げることで、日常的に得ていくものなのです。そして、それらを掘り下げる中での基本的な道具が義務教育で学んだものであることは言うまでもありませんし、国数英理社のいわゆる五教科にとどまらず、美術・音楽・技術家庭科・体育の実技系も含まれます(実技とはいいながら、理論的なこともやっていますから)。
そして、一般的知識はいつそれが実を結ぶかわかりません。頭の中に溜め込まれ、熟成され、あるとき何かのタイミングで他の知識と回路がつながる。そんな気の長いもの。イトナのように、焦ってはいけません。


とまあそんな感じの『暗殺教室』で描かれている「学ぶ」ということ。他の点についてはまた後日と言うことで。



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