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神話にメガネっ娘に神話と、少年の心をくすぐる『昔話のできるまで』の話

現代によみがえった日本神話。漫画研究会のハードな漫画指南。魔女に命を救われた少年。おっぱいおさげ眼鏡と「ネズミの嫁入り」の融合。小学生男女と龍の出会い。第二次大戦末期ドイツでの戦車逃避行。豊富な知識と濃厚な趣味に裏打ちされた、山田穣初の短編集……

ということで山田穣先生『昔話のできるまで』のレビューです。
山田先生と言えば、先頃最終巻が発売された『がらくたストリート』の作者ですが、同作と同様の趣味臭の非常に強い作品で、全6編の中に、民俗学、戦車、めがね、おっぱい、結われた髪、いちゃいちゃする小学生と、作者のリビドーがこれでもかと詰め込まれている作品となっております。民俗学の解釈などには諸説あるでしょうから、そこらへんの当否はとりあえずおいといて、「これはこういうもん!」と思って描いている思い切りの良さが清々しいですね。無縁論はおセンチすぎてさすがに鵜飲みできねーよ!
私が好きなのは、表題作でもある『昔話のできるまで』と、『ザンネン アンド ドラゴン』。
前者は、町の神社で居眠りぶっこいていた女子中学生(たぶん。明言はされていないけどなんとなく)が、祠をいじくったらそこに封じられていた神様を解放してしまい……。というお話なのですが、その子とつれあいの幼なじみの少年との距離感が好きなのです。強気でつんけんしているけど彼を好きな女の子と、つんけんしているのをまるっと飲み込んだうえで上手くあしらっている彼女を好きな男の子。俺にもこんなおっぱいめがねの女の子が幼なじみにいたら、人生が違っていただろうに……。最終ページの二人の会話が、タイトルを絶妙に表しているのですが、こんなセリフをさらっと言い合える少年少女。とてもよいです。
後者は、龍が絶滅危惧種レベルとして存在していること以外は現代日本と変わらない世界で、たまたま龍を見つけた少年と、クラスメートの少女がイチャイチャする話です。一応、龍が人間と出会ったときはその者の願いをかなえてくれる、という設定や、そこから転がるストーリーがあるのですが、おおむねそれらは、かわいいけどちょっと残念な女子小学生と彼女よりもちょっとだけ人生を達観しているような男子小学生がわたわたとイチャイチャするための添え物みたいなもんです。ボロ泣きして泣き止まない少女ってかわいいよね。
川で溺れて死にかけている少年を助けることにした魔法使いのゴスロリ少女(ただし見た目のみ)を描く『まほうつかいと少年』も、わずか10pの掌編ながら、奇妙な寂しさを味わわせてくれる作品です。
趣味臭は強いながらも作風は軽く、バラエティに富んでいるため、気軽に読める短編集としてほどよく仕上がっていると思うのです。


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