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二人の男が恋仲になるまでの、断片的な日々の記録『スニップ,スネイル&ドッグテイル』の話

真面目で人付き合いの苦手な峰。社交的で自由な雰囲気を持つ安城。まるで性格の違う二人は、いつしかお互いに惹かれ始める。そんな二人が,出会ってから恋人同士になるまでの8か月を断片的に,しかもバラバラに描いた物語・・・・・・

ということで、ヤマシタトモコ先生『スニップ,スネイル&ドッグテイル』のレビューです。
峰も安城も元々ノンケの人間。少なくとも、同性愛者であるとは明言されていません。特に安城は、峰と出会う時点で彼女もいました。それが出会うやいなや、お互いも周囲の人間も驚くほどに親密になっていきました。もちろん当初は、二人ともただの友達のつもり。一緒にご飯を食べたり、どこか遊びに行ったり。友達友達。
でも、どこかなにかいつのまにか、少しずつ道が曲がり始める。峰は意識しながら、安城は意識しないままに、二人の距離は友達のそれを超えて近づき始めた。周囲の人間もそれに気づき出す。峰の上司。あるいは安城の彼女。偶然なのかそうでないのか、両者とも女性なのですが、峰の、あるいは安城の変わり始めた雰囲気を察する。安城と彼女の間には不和が生じ、結局二人は別れ、安城はフリーに。戸惑う気持ちを抱きつつ、本当に自分は峰に対してそういう気持ちを持っているのかと探りながら、ついに安城はある種の期待と覚悟を持って,そのことを峰に告げた。
こうして二人は恋仲になるのですが、この作品の面白いところは、これら一連の出来事の時系列がシャッフルされている点です。二人が出会うのが2011年10月9日で、エピソードの最終日が2012年6月27日なのですが、作中で最初に描かれている日が、この時系列の最後の日となっています。だから読み手は、まず最新の二人の関係性を知ることになる。その上で、どういう過程をたどってそういう仲になったのかを、パズルのピースを繋ぎ合わせるように、理解していくのです。
言ってしまえば、初見で流れを理解するのは難しい。巻末に時系列と掲載ページの対応表は載っていますが、それを見ながらページを何度も繰るのは、正直面倒くさいです。でも、何度もページを繰るとは、何度もそのシーンを見返すということ。流れを追いながらシーンを見返すていると、それまで見過ごしていたことがふと浮かび上がってきたりもします。もともとこの二人の関係の進展は、派手な何かが起こるわけではありません。気がつくといつの間にか。自分自身が不思議に思うほどに、感情の水位が高まっているのです。
これはあれ、読み返せば読み返すほど味が出てくる作品。エピソードが細切れになっているだけに、派手なカタルシスは生まれないけれど、ピースを色々と組み合わせながらパズルができあがっていって、そして一枚の絵が完成するような、そんな作品。
ちなみにタイトルの由来はマザーグースの歌。


  What are little boys made of?
  Snips and snails,
  And puppy dog tails,
  That's what little boys are made of.


  男の子は何でできてるの
  ぼろきれやかたつむり
  あとは子犬のしっぽ
  そんなものでできてるよ


「砂糖やスパイス、それにステキななにもかも」でできている女の子に比べ、ずいぶんと意味のないがらくたばかりでできてる男の子。そんなものを喜ぶ男の子。この作品の二人の関係からは、そんなこどもっぽさ、無邪気さが感じられます。いいタイトル。


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