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人ならざるモノと,それを殺すモノ 誰がために羊は死ぬのか 『白暮のクロニクル』の話

【オキナガ -息長-】
それは人間とよく似た,けれど不老不死の種族。現在の日本には推定10万人が存在。多くは厚生労働省の管理下にあるが,基本的には一般社会に溶け込んで生活している。
ある日,渋谷区の飲食店で殺人事件が起きた。遺体は首を切られた上で心臓を杭で貫かれているという,ひどく凄惨な事件だ。だが問題は,それ以上に,この被害者がオキナガであるということ。偶然遺体の第一発見者となった新人公務員・伏木あかりは,事件に流されるようにして,オキナガを管轄する厚生労働省「夜間衛生管理課」に配属され,事件を追うこととなる。そしてそのバディは,少年にしか見えない,しかしその実88歳のオキナガ,雪村魁だった。こうしてあかりは,オキナガをめぐる連続殺人事件にまきこまれていくこととなる・・・・・・

ということで,ゆうきまさみ先生の新作『白暮のクロニクル』のレビューです。太古から存在する人間によく似た異種族と,それにまつわる連続殺人事件。帯曰くの「歴史,ミステリー,ほんの少しのエログロ嗜好。僕の好きなものを詰めて,エロティシズムにも挑戦したい。」どおりで,全体的にダークな作品となっています。くわえて,ほんのり漂う社会諷刺,といったところでしょうか。
主人公の伏木あかりは,医大を卒業後に国家一種に合格,研修先の渋谷区保健所で扱った件の中で,たまたま殺人事件に遭遇します。この彼女,現場保存をする警察に対し,保健所の職務の邪魔をしないでくれと詰め寄ったり,知らなかったとはいえ厚労省の直属の上司に当たる人間に食ってかかったりと,よく言えば物怖じしない,悪く言えば無鉄砲な人間。そんな彼女だからなのでしょう,偏屈なオキナガ雪村との連絡役,平たく言えば相棒に任命されました。
雪村が追う,ひつじ年の度に女性が惨たらしく殺される連続殺人事件,通称「羊殺し」。それとはまた別の殺人事件で,重要参考人としてマークされている雪村。それを追う警察。そして警察の中にもまた別の怪しい動きがあり,それはオキナガを管轄する厚生省にも言える。そもそも,オキナガはどのような存在なのか。「羊殺し」はなぜ起きるのか。オキナガの連続殺人はそれとどう関係があるのか。ミステリーの要素がこれでもかとちりばめられています。
ゆうき先生の作品は,「いやなやつ」が本当にいやなやつとして描かれてると前から思っていて,『じゃじゃ馬〜』ではその面がアクとして出てしまうように感じましたが,本作や『パトレイバー』であれば,悪役が悪役然として描かれるということですので,むしろグッド。いい具合のサスペンス感が出ます。この「いやなやつ」感もなにに由来するのかいつか考えてみたいものですが,まあそれはそれとして。
オキナガという超常的な存在と,それの対極にあるような厚生省や警察といった国家組織。それらの行動や思惑が錯綜し,非常に大きな何かが蠢いていることを予感させるサスペンス。今後の展開に期待大。


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