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男二人、気持ちイイ除霊の先には何がある 『さんかく窓の外側は夜』の話

書店員の三角(みかど)は、物心ついた時から「あれ」が見えていた。他の人が幽霊と呼ぶような存在であるところの「あれ」。そのことについては誰にも言ったことはなく、自分一人のものとずっと抱え込んでいた。けれどある日、書店にやってきた除霊師・冷川(ひやかわ)は、彼のその才能を利用し、除霊を行った。そして冷川は言う。
「最高 運命ってあるんですね」
こうして、三角と冷川の凸凹除霊が始まる。男二人のBromance除霊劇……

ということで、ヤマシタトモコ先生の新刊、『さんかく窓の外側は夜』のレビューです。なお、私が参加したこの作品の新刊読書会のレポートはこちらの記事で。1/31の時点でイベントにて本作を入手していたものの、当然のごとくネタバレ厳禁だったので、しばらく溜め込んでいました。ようやく書けるぜ。
さて、ヤマシタ先生の新刊は、前情報を一切知らなかった自分としては予想外のオカルトもの。幽霊が出てきて、呪いが出てきて、それを払う人呪う人。オカルト描写がガチで怖かったりします。
で、その上でBL。もうちょっと正確にはBromance。自分も初見の単語だったのですが、簡単に言えば、男性同士(基本的には両者とも性的嗜好はストレート)の、肉体関係未満の親密な関係性だそうです(ちなみに女性版はWomance)。実際三角と冷川は、1巻現在ではストレートの性的嗜好であると推定できます。
ただ、冷川が三角を利用して行う除霊、それは、霊が見えるという三角の魂をブーストにして、霊をつかんでどこかへ放り投げるという至極乱暴なものなのですが、そのとき三角が感じる感覚は、「なに 今の なんか めちゃくちゃ 気持ちよかった」「む む 夢精に似てる… 勃起してないのが不思議」。冷川曰く、「魂が触れ合うと気持ちいい」とのことですが、事実三角はその感覚に骨抜きにされてしまいます。幽霊は怖くて、極力近寄りたくなくて、だから幽霊に近寄らなくてはいけない除霊なんて御免こうむりたいのに、その快楽の前には抗えず、つい冷川に同行してしまう。もちろん除霊アシスタント料としてもらえる、バイトの書店員には破格の報酬というのも理由にあるでしょうが。
二人の関係性は、空気を読まず日本語も少々不自由な冷川と、幽霊を避けようと幼いころから意識していたせいか、彼とは逆に空気読みな三角というもの。まさに凸凹コンビ。いやいやながら、自分ずっと避けてきた世界に引きずられていく三角と、そんな彼をどこにためらう理由があるのかとでもいうような態度で引っ張っていく冷川。いやなものにいやいや接しているけど一旦それに接したからには受け入れて振る舞う三角と、そんな彼を面白いものを見るような目で見る冷川。
なんというか三角は、危ういところを危なっかしく歩くけどその本当の危なさに気づいていない、という感じで、冷川がそれを興味深げに見ているのがなんかわかります。二人の関係性はどうなっていくのでしょうか。
トーリーは、当初の凸凹除霊劇から、1巻の半ばから猟奇性を帯びだすのですが、その最中で、人が人に魅かれる時、とでもいうようなものが描かれだします。それが続刊でどうなっていくのか、そこも楽しみです。
今までも、人が見せる剥き出しの心情を様々なエピソードから描いてきたヤマシタ先生ですが、ホラーという新たな切り口で、恐怖であるとか、恐怖を越えた先にあるなにかへの魅力であるとか、また別の剥き出しの心を描いてくれるのかと、続きが楽しみでしかたありません。でも、次巻発売予定が来冬。今2月ですけど、来冬。来冬……


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