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「夢」の世界、それは不条理で不可解でそれでもリアリティがあるもの『足摺り水族館』の話

母親から頼まれた謎のお使い物を探すために、そろわないものがないといわれる商店街まで足を運ぶ『完全商店街』。自由研究のために訪れた、日々生まれ変わる新しい世界を展示しているという謎の博物館『新しい世界』。京都への修学旅行で、クラスメートからはぐれた末に辿り着いた謎の名所群『イノセントワールド』。親戚からもらった本に挟まっていたチケットにつられて向かった謎の水族館『足摺り水族館』等々。謎のような夢のような、それでいてどこかしら納得してしまうようなお話が詰まった短編集……

足摺り水族館

足摺り水族館

ということで、panpanya先生の『足摺り水族館』のレビューです。
実に独特な味わいを持ったこの作品群、端的に表すなら、夢の世界を歩いているような漫画、です。
陰影が濃く強いコントラストで描かれた背景と、それと対照的にシンプルを通り越して手抜きに近いほどデフォルメの利いた人物。

(p41)
犬面人や潜水艦面人といった珍妙なキャラクター。

(p274)
現実的な条理をぶっちぎっているくせにどこか一定のルールがあるかのようなストーリー。いびつでありながらなぜかその在り方に納得してしまう不可思議な統一感は、まさに夢のようです。夢想的とか夢幻的とかのそういう「夢」じゃなくて、わけがわからないのにそれを見ている最中はリアリティしか感じないような、普段見ているあの「夢」。抒情的とかそんな気取った感じではなく、幻想的とかそんなかわいらしいものでもなく、なんかもう変に説得力のある力強さを持った「夢」。
そして、ストーリーは基本的に主人公の女の子(どの短編も、主人公は似たような外見の少女です)の行動と思考に合わせて進んでおり、何度となく主人公と同じ目線、すなわち主人公の一人称視点のコマが挿入される。これにより、読み手と主人公が同一化されやすくなり、「歩いているような」と表現しうる感覚が生まれます。
つまりは、他人の見ている夢をその人の視点で一緒になって味わうような、そんな作品なのです。
万人におすすめの作品かというとあいまいな笑いで否定してしますが、どこにでもある作品かというと全力で首を振らざるを得ません。個人的には、一昔前にネット上話題になっていたweb漫画『ミッションちゃんの大冒険』と通ずるものがあるように思う、というか作者は同一人物なんじゃとまで疑っているのですが、それを証するものは見当たりません。どうなんでしょう。
足摺り水族館/1月と7月
作者本人から単行本の説明がされています。
楽園/白泉社
web増刊の7/26、8/16、8/31付、作者の短編が掲載されています。


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