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中年板前とうら若き仲居の切り盛りするお宿 『海月と私』の話

駅からも浜からも温泉からも外れた、海沿いの鄙びた旅館・とびうお荘。元銀座の板前だった中年の主人と老仲居の二人で切り盛りしていたものの、その仲居が急逝してしまった。これが機会と宿を畳もうかと思うものの、予約の入っている直近のお客はどうにかしなければいけない。こんな辺鄙なところに来る人などいるものかと捨て鉢に出し「住み込み可」の求人に、やってきたのは予想外にも若い女性。とまどう主人と、何も問題がないかのように振舞う女性。それはまるで、ふわふわと水面を漂う海月のよう。なしくずしに二人の生活は始まって……

海月と私(1) (アフタヌーンKC)

海月と私(1) (アフタヌーンKC)

ということで、麻生みこと先生の新作『海月と私』のレビューです。
中年のおっさんと若い女性という、歳の差カップル好きな私(ただし2次元に限る。高橋ジョージは不可)としてはとてもおいしい設定ですね。作中ではさらに輪をかけた初老の男性と妙齢の女性による歳の差カップルも。なんだ、そういう漫画なのか?
主人公の宿主人は、関係のぎくしゃくしていた父が営んでいた宿を、彼が急逝したために残務処理をしているうちに継ぐことに。そのせいか、宿の経営にはいまいち熱意が見えない。そこにやってきた、素性の知れぬうら若き女性。岩松梢と名乗る彼女、それすら本名かどうかもわからないけれど、彼女は天然なのか計算なのか、実に鮮やかにおっさんころがしを決めてくれる。宿のロケーションを褒め、主人の料理を褒め、主人の性格を褒め、主人が自分の旦那だという方便をさらりと言う。そりゃあ一人やもめの中年おっさんはまいっちゃいますよ。
もともと彼女の言うとおり魅力ある宿。辺鄙な場所にもかかわらず、部屋はよく埋まり、常連さんもついている。彼女が来てからは男性客の評判も良い。お客さんたちが喜ぶ表情も、以前より妙に主人の心を打つ。主人は少しずつ宿の経営に意味を見出していく。そして、彼女への気持ちも。振り回されていることも自覚しつつ。

とまあ、こう書くと、悪女に振り回されてる男やもめとしか思えないんですけど、1巻では彼女の詳細がまるでないのだからしょうがない。わけあり、かも、ということが主人の視点からしか描かれず、彼女自身のバックグラウンドは何も見えていない。にもかかわらず、彼女がお客さんのいざこざに首を突っ込んだときは、何を考えているかということが描かれている。
この、背景がわからない人間の心の機転で事態が動く、というシチュエーションが新鮮です。
どうやら2巻では彼女の正体が判明するらしいので、それで1巻の状況にどういう色がつくのか楽しみです。



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