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おっさんと女子中学生の父子ふたり暮らし 『千と万』の話

女子中学生の詩万は、父親の千広と二人暮らし。微妙に噛みあいながら微妙にすれ違う二人の毎日。おっさんに女子中学生の気持ちはわからないし、女子中学生におっさんのきもちはわからない。でも、まあ、なんやかやと二人の生活は続いていく。二人家族がなんてことなく送るなんてことない日常劇……

ということで、関谷あさみ先生『千と万』のレビューです。おっさんと女子中学生、それも思春期と第二次性徴を迎えたばかりの中学一年生の二人家族の話なのだから因業が深い。なにしろ第1話が初潮の話。こいつは因業だ。
とはいえ、別にエロいもんじゃありません。基本的には、女子中学生が父親のおっさんくささにうんざりしたり、デリカシーのなさにげんなりしたり、意図せず見せつけられた友人の母子関係にうんにょりしたり、あとはまあ父親が思春期の娘の気持ちがわからなくてがっくりしたり、そんな感じ。
どんな家庭であれ、多かれ少なかれそこにはなんらかの問題があります。金持ちだろうが貧乏だろうが、両親がそろっていようが片親だろうが、複数の人間がひとところで暮らしていれば摩擦は生まれるもの。人間なにが地雷かはわからないものです。それがたとえ血のつながった家族であろうとも。『千と万』は、それがたまたまおっさんと女子中学生のふたり家族、というもので、そういう家族構成だからこそのちょっとした悩みなどがつらつらと描かれているわけです。
で、この「ちょっとした悩み」感が小気味いい。父子家庭だ思春期だというものをことさら大げさに取り上げず、体験したことはないけれどなんか理解できる(気がする)うだうだした心の動きに妙に惹かれるのです。
けれどこのうだうだもマイナス面ばかりではなくどこかしらで噛み合うこともあって、たとえば第1話の初潮の話では、娘の初潮にどうすれば適切なのかかわからず混乱しながらも気を遣う千広の内心に気付いた詩万が、逆に気を遣ったりだとか、第6話では、詩万のことをしっかり者と褒める友人の母親に、そう思われるのが嫌な詩万は内心うんざりするのですが、そんなことは露知らず千広は笑顔で案外詩万はだらしないと口走り、詩万にはむしろそれが心地よかったりする、という具合で。すれ違うからこそ噛み合った、とてもいい話です。
まああとはあれですよね、詩万がかわいすぎですよね。初めてするピザの注文に四苦八苦するシーンとか、父親の千広じゃなくてもそりゃあニマニマして見ちゃいますよね。あと千広の妹(=詩万の叔母さん)の那由さんもかわいい。あれで三十路(推定)とか、なにか間違ってるレベル。
株式会社双葉社 | 千と万 1(セントマン) | ISBN:978-4-575-84249-4
ここから因業な第1話を試し読みできますので、ニヨニヨしてみればいいんじゃないかな。


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