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ダラダラ不真面目文学談義『バーナード嬢曰く。』の話

 図書室のすみっこでいつも本を読んでいる彼女。あだ名はバーナード嬢(自称)。本名は町田さわ子だが。彼女は真面目に読書をしているようで、そのくせろくにページは進まない。いつも余計なことばかり考えているからだ。読書家に見られたいと思いながら本を読んでいる彼女の脳内は、愚にもつかないことばかり。ちゃんと読めよ。
 本を読んだり読まなかったり読まなかったり読まなかったりするド嬢こと町田さわ子とその周辺の、不真面目なブンガク話……

 ということで、施川ユウキ先生の新刊『バーナード嬢曰く。』のレビューです。上述の通り、不真面目なお話です。そんなのは表紙のセリフから一目瞭然ですけども。主人公が『カラマーゾフの兄弟』を持って、「一度も読んでないけど 私の中ではすでに 読破したっぽいフンイキになっている!!」とか、いっそ清々しい。本文中では別の本に対して言ってるセリフなんですけど、『カラマーゾフの兄弟』にはまた別の形でしょうもないことを言ってます。不真面目。
 読書家(に見られたがる)(でも失敗してる)バーナード嬢ことド嬢こと町田さわ子。なんだかんだ言いながら彼女の話に付き合う遠藤。そんな遠藤に恋する図書委員・長谷川スミカ。SF熱が行き過ぎてついつい求められもしない薀蓄を垂れ流し、ド嬢の不真面目発言には反射的に激昂してしまう読書好き・神林しおり。この四人(長谷川スミカは影が薄いですが)が古今のいわゆる名作に関する話を、内容にはたいして触れないままにダラダラと続けるという、それだけといえばそれだけの作品。今までの施川先生の作品で見られる、ある事柄を普段とは違う視点から見ることでおかしみを生む、というネタつくりを本を土台にしてやっている感じです。
 基本的な態度が不真面目なだけに、読書に対する高尚さなどはみじんも無く(ただし馬鹿にしているのとは違う)、気軽な気分でケラケラ読めます。前述の『カラマーゾフの兄弟』(ドストエフスキー)や『プランクダイヴ』などのグレッグ・イーガン諸作品、『銃・病原菌・鉄』(ジャレド・ダイヤモンド)など、ハードル高そうな感じの本をぞんざいに扱ってる(いい意味で)ので、「ああ、読書ってそんなもんでもいいのね」という気分になれます。目の前にポンとおかれたり、本屋や図書館でふと見かけただけでは手に取らなそうな本たちも、本作に登場していると、不思議に「ちょっくら読んでみようかな」という気になるのです。
 そう、この作品の不思議なところは、登場する作品の内容なんてまる触れられていないのに、なぜかその本を読みたくなってしまうことなんです。登場する作品はSFが多いんですけど、私がSFをほとんど読まないこともあって、名前までは知っていても中身は知らないものばかり。で、その作品の紹介は「SF史上屈指の青春恋愛小説」(『ハローサマー、グッドバイ』)とか、「地球を救う使命を与えられた天才少年の苦悩と成長を描いた大傑作」(『エンダーのゲーム』)とか、わりと普通。でも「読んでみたい!」と思わせる。
 本が好きな人って多かれ少なかれ、それが格別自分の好きな分野でないとしても、その分野で有名な本を読んでいないことに後ろめたさを感じるものだと思うんですが(ですよね? ですよね!?)、そういう作品っていざ勧められても、「今まで読んでなかったし今更読んでもなんだし古典って読むのに時間かかるしゴニョゴニョ」とつい構えてしまい読めなかったりするものです(ですよね? ですよね!?)。でも、本作みたくいい意味で不真面目な態度で本を紹介してくれると、そういう心的抵抗は薄くなる。まあなんだかんだ言ってもただの本だし、という気になって、手に取ってみたくなる。主に本を勧める役どころの神林さんが、つい必要以上に熱を入れて話し始めちゃって他のキャラがドン引きしているのもよし。一度引いた後だからこそ、普段よりもう一歩奥に踏みこもうという気になれるものです。
 この作品も、ごく一部ですが試し読みができます。神林さん初登場の話です。SF好きの業ってこんななのかなと勝手に思ってます。
真っ白な原稿の上で、俺は爪を切った。 「鬱ごはん」1巻、「オンノジ」、「バーナード嬢曰く。」単行本3冊同時発売!後、サイン会やります。
 最後に作中から引用を。

本は読みたいと思った時に読まなくてはならない
その機会を逃し「いつか読むリスト」に加えられた本は 
時間をかけて「読まなくてもいいかもリスト」に移り
やがて忘れられてしまうのだ
(p51)

ここで某進ハイスクールの某セリフを吐いてもいいのかもしれないけど、あっという間に聞かなくなった気がする。



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