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漫画の話です。

料理男子によるほっこり食卓『まかない君』の話

大学に通うため上京してきた浩平は、凛・佳乃・弥生の従姉三人が住む一軒家でお世話になることに。共同生活ということで彼に割り当てられた家事は料理。前料理担当の前任だった弥生による呪わしき惨状に辟易していた三人の食卓に、今救世主が舞い降りる……

まかない君 (ジェッツコミックス)

まかない君 (ジェッツコミックス)

ということで、西川魯介先生『まかない君』のレビューです。本作のあとがきでも書いているように、今まで「ナチスドイツだのオカルトだのクトゥルーだのを道具立てにトンチキなまんがを描いてき」た西川先生とは思えない、「まともな設定」で描かれた作品です。主要な登場人物の3/4が眼鏡なあたり、さすが西川先生ですけども。
まあ本当に普通の漫画なんですよ。ありもので料理を作って、それをみんなで食べて、おいしいおいしいと喜ぶ話。西川先生曰くの「年上従姉たちと同居するおさんどん青少年」の話。でも、それだけの話が妙に面白い。
何が魅力かといえば、一つ屋根の下に暮らす人間が一つの食卓を囲んでおいしいおいしいと表情豊かに食事をする、そんな、ありふれているようでいてななかなかお目にかかれないシーンがてんこ盛りなところじゃないでしょうか。楽しそうに食卓を囲むことが魅力的な漫画といえばよしながふみ先生の『きのう何食べた?』がありますが、まさにああいう感じの面白さがあります。
私も時々料理を作って家族にふるまいますが、「おいしい」と言ってもらえるとそれだけでうれしいものです。作る分にも、自分一人だけの為よりも、誰かと食べるために作る方が張り合いがありますしね。よっぽど料理好きの人ならともかく、面倒くさがりの気がある自分のような人間は、ともすれば食事がそっけない栄養補給でしかなかったりしますが(深めの平皿にご飯をよそって、おかずをその上にのっけたりとか。華がないね)、誰かと食べるためにテーブルの上に皿を並べようと思えば、それなりに盛りつけをこったり、一汁三菜くらいはほしいかなと思ったり、味付けのバランスも考えたりと、ぐっとやることが増えます。でも、それはけっこう楽しかったりするもので。
本作の主人公・浩平も、任された料理を苦にすることなく、楽しげにやっています。呪われし料理人・弥生も、彼の周りをうろちょろしながらお手伝い。味見をしたり、つまみ食いをしたり、おにぎりを作って手にくっついたおべんとさんを食べたりと、食べてばっかりですね。いやいや、食欲旺盛な女の子は可愛いものです(cf.もぐっ娘)。浩平も、つまみ食いをしている弥生をいとおしそうに見ています。
かわいいといえばこの作品、何か食べてる女性三人の口許にやたらとフェティッシュな視線を注いでいます。パスタをすすりあげる唇、料理の刺さったフォークを前にして半開きになった口、唇についたソースを舐めとる舌などなど。エロイ。
まあね、上で時々料理を作ってるなどと書きましたがね、特別編『まかないちゃん』で弥生が言った「浩平の作ったご飯だと お腹いっぱいになるだけじゃなくて いっつも胸の中が「わーっ!!」てなるんだよ」ってセリフを言ってくれるような女の子が僕もぼしいお……


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