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こじれた感情が生んだ事件を女子高生探偵が解きほぐす 『名探偵マーニー』の話

人がいればそれだけ悩みがある。トラブルもある。老いも若きも男も女も、それは変わらない。そんな時はマーニーにご相談! ちょっとズボラでぼさぼさ癖っ毛の彼女は、現役女子高生でありながら探偵である父親の助手もしっかりこなし、依頼された事件はばっちり解決。日当5000円+経費。成功したあかつきにはその三倍を。現金マネーさえもらえればマーニーにおまかせさ!

名探偵マーニー 1 (少年チャンピオン・コミックス)

名探偵マーニー 1 (少年チャンピオン・コミックス)

ということで、木々津克久先生の新作『名探偵マーニー』のレビューです。
探偵ものではありますが、『コナン』や『金田一少年』のような本格推理ものというか、人死にバンバンというかなものではなく、もっと身近な事件を彼女は扱います。まあ普通の女子高生ですから。そんな死神みたいな子じゃないですから。柔らかいところでは結婚式で見かけた男性を探してほしいという友人の依頼。ハードなところでは病床で死んだ親友が遺したダイイングメッセージの謎を解いてほしいというもの。1巻時点では、どれも1話完結でサクサクと進みます。
木々津先生と言えば前作『フランケン・ふらん』のグロかわいさですが、本作では今のところそのような気配はありません。犯罪の香りはするけど、一応普通の社会の範疇です。それでも何か通じているところがあるとすれば、ある人間の欲望がそれを理解できない人間にとっては思いもよらないことを起こす、という点ですかね。
医療をベースにした『フランケン・ふらん』は、依頼人たちが持ち込む身体や美容や生命についての無茶な依頼を、主人公のマッドドクター・ふらんがそれに輪をかけて無茶な形で応えるという作品でした。人の手には余る欲望を叶えようとしたらどうなるか。そういうことをかなりシニカルにそれでいてグロく表現していた『フランケン・ふらん』。
対して本作は、様々な種類の欲望を抱え、それを自分なりの形で叶えようとしている「犯人」たちが登場します。その欲望とは、たとえば親子愛のような誰でも理解できるようなものだったり、あるいは「なんでそんなことを?」と疑問に思うようなものだったり。でも、それがどんな欲望であれ当人である「犯人」にとっては、そうせずにはいられない深刻なものなのです。「そうせずにはいられない」という切羽詰まりが発露することで、他の人が見れば首を捻るような不可解な事件が生まれる。こじれた他人の感情を解きほぐすのに必要なのは、起こったことを客観的に見る目、そして相手の感情に引きずられないシニカルさを備えた心。そんなことを知ってか知らずか、ズボラで現金でマイペースなマーニーは、こじれた感情から生まれる不可解な事件を解き明かしていくのです。
「すっげぇおもしれぇ!」と称賛するような類の作品ではないのですが、短い話の中に世の中に対するシニカルな視線をさくっといれてくる。ふとした時に読みたくなる作品です。
ところで木々津先生、『アーサー・ピューティーは夜の魔女』の2巻はまだですか。


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