女悪魔のイヴは、上司の命令で人間界へ子づくりしに行くことに。でも、指定された男性・アキラはあろうことかオカマさん。女性を抱く気などつゆほどなし。無理矢理同居を始めたイヴは、あの手この手でアキラの性欲をかきたてようとするけど失敗ばかり。アキラの妹や他の魔物の登場で、イヴとアキラの周りが徐々に騒がしくなっていくけれど、その裏ではどうやらなにか悪魔たちの企みがあるようで……
- 作者: 伊藤黒介
- 出版社/メーカー: 竹書房
- 発売日: 2012/08/27
- メディア: コミック
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初めに人ありき 生にあえぎ 世界に怯えた
逃れられぬ死への恐怖と畏敬 人は命に意味を求めた
やがて人は神を創り給うた 人は造物主となり神を作り悪魔を生み 次いで天使が生まれ妖精がはびこった
(p67)
人の「信仰と情念」によって生まれた悪魔たち。それは、人が自らの足りなさゆえに望んだものではあるのですが、だからといって人に幸福をもたらすとは限らない。
造物主たる人は 言葉を作り物語を編み そして神と悪魔を生んだ
すべては世界に意味を付与するため 神も悪魔も望まれて生まれたんだ
人の願望を反映して悪魔は強大な力を有する 腕力 思考力 記憶力 知覚力 すべて人間の比じゃない 人から見れば完璧な存在さ
その完璧さ ……人が憧れたものは なにひとつ人間の幸福に寄与するものではなかった
まして悪魔の幸福にもね
(p75)
こういうことを、主人公の悪魔たるイヴが口にするのです。
悪魔に一切の存在価値はなく 人に仇なすとも何ら益するところはなし
ただ一刻も早く滅びゆくという目的があるのみだ
それが君の信条だったなイヴ
(p69)
享楽的にセックスを狙っているイヴの内には実は、自身を含む種族そのものの消滅願望がある。にもかかわらず、アキラとの子づくりについてはなにか種族全体の意向があり、それにはイヴも従っている様子。コメディの下には、意外にハードなバックボーンが伏流しているようです。1巻の終盤に登場する天使・グロリアのエピソードも、幸福というものの相対性、争いのない愛溢るる世界のつまらなさ、そういうものを、この作品における悪魔・天使という存在を通じて現そうとしてますし、ところにより骨太。ところどころに挿入される聖書や古典の引用も、私の衒学趣味をくすぐってくれます。
4コマなどでもある程度のストーリーがある方が好みなので、『ベルとふたりで』よりもこちらの方が私は好きですね。ネット上で試し読みがないのが残念ですが、書店等で見かけたらどうぞお試しあれ。
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