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荒川弘の描く飯の話

銀の匙』に出てくる飯って美味しそうですよね。

銀の匙 Silver Spoon 1 (少年サンデーコミックス)

銀の匙 Silver Spoon 1 (少年サンデーコミックス)

1巻では空腹にかっ込む卵かけご飯。

(p54)
2巻では地産地消どころか学産学消の手作りピザ。

(p38)
どちらも読んでるだけで喉が鳴ります。
農業高校が舞台の『銀の匙』や、農家エッセイである『百姓貴族』はもちろんですが、ダークファンタジーである『鋼の錬金術師』にも食事や食べ物に関するシーンが散見されます。
ロックベル家で、同行したアームストロング少佐も一緒に食卓を囲むシーン(3巻)。
師匠のイズミの家で、食卓を囲みながらこれまでのいきさつを話すシーン(5巻)。
炭鉱の街・ユ−スウェルでは、危機を救ったエドとメイを豪勢な食事でもてなします(1巻、8巻)。
嬉しいこと、楽しいことは皆で食事を囲んで分かち合う。「遠慮するこたぁ無い 飯は皆で食べた方が美味いだろ」(3巻 p29)というピナコばあさんの台詞がありますね。
アップルパイはウィンリィとヒューズ一家の繋がりを表すものですし、生身の肉体のないアルにとってそれは、肉体を取り戻す動機の一つでした。
このように、食事にはコミュニケーションとしての側面がありますが、なんといっても食事は日々の糧。カロリーをとらなければ人は生きていけません。
それが強く意識されたのは、エドらがイズミのもとで修行できるかどうかを試す一か月の入門試験のエピソードです。
無人島に放置され、満足に獲物をとることもできず餓死寸前まで腹を減らした二人。空腹は活動を制限し、思考を阻害し、気力を萎えさせます。死にゆく虫を横たわったままに眺め「死にたくない」と呟きますが、それ以上のことができないほどに衰弱しました。そこへ差し出された焼き魚。久しぶりに口にする食事に、涙を流しながら二人はかぶりつくのです。

(6巻 p37)
「腹が減って死にそう」というのは、冗談レベルで口にすることはあっても実感することはそうありません。けれど、それを子供の主人公に味わわせているあたりに、荒川先生の考える食事の大切さが表れているように思います。
他にも、リンやメイ、ホーエンハイムは、腹を減らして行き倒れましたし(8巻、19巻)、グラトニーの中で何も食べるものがなかったエドとリンは、革靴を煮込んで食べていました(13巻)。最後の戦いが終わった直後のエドの発言は

(27巻 p152)
「あー ハラ減った! アル 飯にしよう!」
でした。
腹が減っては戦ができないし、戦が終われば腹が減る。生きていれば、腹が減る。生きることと食べることは密接に結びついています。人体錬成。人ならざるものである人造人間ホムンクルス。失われた肉体を取り戻す。人間、生命をテーマに据えた『鋼の錬金術師』で食事シーンが何度となく登場するのは、必然と言えるのかもしれませんね。


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