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平野耕太の笑う主人公の話

平野耕太先生の作品といえば、イカれたキャラクターとイカした台詞回しが魅力ですが、キャラクターがどれだけキてるかは、キてない他のキャラクターとの比較でわかるわけで。常識的な振る舞いをしているキャラクターがいるからこそ、そこからかけ離れた振る舞いをするキャラクターが光るのです。

HELLSING 1 (ヤングキングコミックス)

HELLSING 1 (ヤングキングコミックス)

ドリフターズ 1 (ヤングキングコミックス)

ドリフターズ 1 (ヤングキングコミックス)

HELLSING』にしろ『ドリフターズ』にしろ、主人公格のアーカードアンデルセン島津豊久織田信長などは実にキてるキャラクターですが、それもやはり、脇にモブたちがいるからこそ作中で際立つわけです。
じゃあそんな彼らのキてるものを象徴するものが何かと言えば、笑い顔だと思うのですな。
笑い顔と言っても、女の子の心をきゅんとさせるさわやかな奴じゃなくて、もっと禍々しいの。

HELLSING 1巻 p30)

(同上 p13)

ドリフターズ 1巻 p15)

(同上 p45)
ほら禍々しい。でも、この禍々しさが魅力なわけで。
このように笑う平野先生のキャラクター達は、いったいどんな存在なのかと言えば、『HELLSING』内でこんな言葉があります。

鬼が泣くな 泣きたくないから・・・・・・・・鬼になったのだろう
人は泣いて涙が枯れて果てるから 鬼になり化け物に成り果て って果てる・・・のだ
ならば笑え 傲岸に不遜に笑え いつものように
HELLSING 9巻 p30,31)

鬼ですよ。化け物ですよ。成って果てた成れの果てですよ。アーカードにしろアンデルセンにしろ豊久にしろ信長にしろ、普通人とかけ離れた彼らは、成り果てた末にあの笑顔を浮かべるのです。禍々しい笑顔を。
吸血鬼にされた当初は、変わってしまった自分に戸惑っていたセラスも、

HELLSING 1巻 p85)

(同上 p108)
こんな顔をするようになるのだから、彼女も成り果ててしまったのですよ。
また、興味深いのが、当初は上の画像のように禍々しかったインテグラも、物語の終盤になるとその笑顔が影を潜めていったこと事です。南米へ調査に飛んだら、ミレニアムの謀略でテロリストとされてしまったアーカードとセラス。「化物」であるアーカードは、宿泊するホテルに突入してきた特殊部隊を血祭りに上げたうえで、主であるインテグラに嬉しそうに問いかけます。

我が殺しこれから殺そうとする連中は ただの 普通の何もわからぬ人間達だ
私は殺せる 微塵の躊躇も無く一片の後悔も無く鏖殺できる この私は化物だからだ ではおまえは お嬢さんインテグラ
銃は私が構えよう 照準も私が定めよう アモ弾倉マガジンに入れ 遊底スライドを引き 安全装置セーフティーも私が外そう だが
殺すのはおまえの殺意だ さあどうする命令を! 王立国教騎士団HELLSING局長インテグラル ファルブーケ ウィンゲーツ ヘルシング!!
(3巻 p85,86)

それに対してインテグラは、葉巻を吸い、2ページ半かけて熟考した末に、机を叩いて怒鳴ります。

私をなめるな従僕!! 私は命令を下したぞ 何も変わらない!!
見敵必殺サーチアンドデストロイ」!! 「見敵必殺サーチアンドデストロイ」だ!! 我々の邪魔をするあらゆる勢力は叩いて潰せ!!
逃げもかくれもせず正面から打って出ろ!! 全ての障害はただ進み 押し潰し 粉砕しろ!!
(同上 p89)

そこにはもう笑顔はありませんでした。化物ではなく、自分と同じ人間を殺す命令を下すことに強く葛藤を感じる、一人の人間の姿があったのです。
彼女のその答えに、アーカードは満足します。それこそが、彼女が人間である証明だから。葛藤した上で命令を下せる彼女こそが、自分が使えるに値する人間の主人なのです。
最終決戦にて、自分の敵にまわり吸血鬼へと成り果てた、自分の忠実だった執事・ウォルターを滅殺する命令をアーカードに下したときは、台詞が上とほとんど同じでありながら、今にも泣きそうな顔で、血を吐くようにしてインテグラは言葉を絞り出していました。俺的『HELLSING』名シーンの一つ。
「化物を倒すのはいつだって人間だ」とは、化物であるアーカードの台詞ですが、吸血鬼になることを拒絶しながら化物に成り果てた少佐を、決意に満ちた面持ちで滅ぼしたインテグラは、まさに人間だったわけです。


2月号のヤンキンアワーズで、単行本未収録の『HELLSING』外伝が別冊付録としてついていました。話だけには聞いていた、堕第二次大戦中でウォルターが主役の話。ロリカードもお目見え。ああ、面白い。面白いけど、ちゃんと完結して単行本化されるんでしょうか。まあそれが不安だから普段買わない雑誌を買ったんですけど。あと、『ドリフターズ』3巻はいつごろ発売になるんでしょうか。2巻発売が去年の秋だからまだ先でしょうが、どれくらい先になるのかが読めない……!



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