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生涯青春!快足快盗のジジイは走る 『GGG』の話

最近巷に出没する、安いものしか盗まずやたら足の速い泥棒。最初に盗んだものがブルースハープだったことから「ハープ」と名付けられた彼は、実は御年70歳のご老人。年寄りの冷や水もなんのその、自分が楽しいと思ったことに忠実に、時には人助けもしつつ、走る、走る、走る。 

ジジジイ -GGG-(1) (モーニング KC)

ジジジイ -GGG-(1) (モーニング KC)

ということで、小山宙哉先生『GGG』のレビューです。
現在モーニングで『宇宙兄弟』を連載中の小山先生ですが、その前にはこんな作品も連載していました。細々としたところに荒さは否めないものの、『宇宙兄弟』に見られるかっちょいい人物造形はこの時から健在です。
主人公の泥棒ハープは70歳のじいさん。日本人の平均寿命が延びたところで、70歳と言えば誰が考えても老人の範疇。腰は曲り、歯は無くなり、頭も呆け始め、縁側で茶を啜っているのが似合う年齢。でも彼は、走る、走る、走る。変装し何かを盗んでは、そんじょそこらの若者なんか相手にならないくらいのスピードで走り、風のように去ってしまう。変装しなかったところで、そんな足の速い爺がいてたまるかと、むしろ素顔の方が変装じゃないかと疑われそうな、追手や警察に影さえ踏ませず逃げ切る恐るべきジジイ。
そんなグランペール・テリブルのさらに恐るべきところは、その歳でなお人生を楽しんでいること。町中を駆け回り、若者を煙に巻き、興味があることにはなんでも手を出し、時には人助けもしちゃったりなんかして。

遅くねえよ 遅いってなんだ?
俺なんてあれだよ 最近ハーモニカ練習中
全然遅いと思ってない
家ではおいしいパスタも研究中!
遅いと思ってないよ
今の気持ちを実行すりゃいいよ 遅いと言って何もやらない奴は 若返ったって同じこと言うだろうよ
(p95〜97)

これが70歳のジジイの言葉。
それを裏付けるのが、街を疾走する彼の姿。道から道へ、屋根から屋根へ、縦横無尽に夜を切り裂く。その姿があまりにもかっこよくて、あまりにも楽しそうだから、「ああ、このジジイまだまだ青春だな」と思わずにはいられない。青春どころか、好き勝手やるその性根は子供と同じ。

「あなたは… すごく早いね 子供たちの中に溶け込むのが…
なにかコツとかあるのかな?」
「……
子供たちと発想が一緒なだけだよ
紙ヒコーキカッコイイ!!とか」
(p86)

何かに対して「カッコイイ!!」と素直に驚嘆できる心。歳をとればとるほど経験という名のフィルターはぶ厚くなり、そんな心は隅っこへ追いやられてしまうのに、古稀を迎えてもど真ん中にそれがあるジジイは、そいつ自身がカッコイイ。
死んだ母親の描いた最後の絵を取り返してほしいと幼い姉妹に頼まれたり、長いこと息子に素直に慣れないでいた父親の背中を押してやったり、自分の名を騙るケチな盗人を捕まえたり、昔の友人の最後の願いを聞いてやったりと、生涯青春のジジイはとどまることを知らない。泥棒はともかく、そんな風に歳をとれたら、老いることも辛くないんだろうな、と。歳相応に枯れてる好々爺的なジジイも好きですが、その対極にあるような姿もまた良し。
一応1巻とナンバリングはされてるのですが、果たして連載の続きが描かれることはあるのか。『宇宙兄弟』を中断してまでとは言いませんが、完結後にはまた描いてほしい作品でごんす。



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