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漫画の話です。

ヤクザとサイキック少女のオフビートコメディ『ヒナまつり』の話

芦川組の若手ホープ・新田の部屋に落ちてきた奇妙な楕円形の物体。
それが全ての始まりだった! 物体の中にいたのは、無表情な少女・ヒナ。
強力な念動力で新田を脅し、ヒナは新田家に住みつくことに。
かくしてヤクザとサイキック少女の危険な共同生活が始まった!
(1巻 帯より)

ヒナまつり 1 (ビームコミックス)

ヒナまつり 1 (ビームコミックス)

ということで、大武政夫先生『ヒナまつり』のレビューです。
どこへいくかわからない、素敵なギャグ漫画。表紙のテンションがこの作品の空気を見事に表しています。集中線を背景に、ポン刀とチャカと構えながら死んだ目をする男・新田と、いくら丼を無表情で構える少女・ヒナ。この違和感にときめくなら読んだ方がいい。その予感はきっと合ってる。
物語の基本的な構図は、ヤクザのシノギやプライベートに精を出す新田を傍若無人に振り回すヒナ、というもの。ヒナの念動力に逆らう術のない新田は基本的に言いなりで、その様子はまるで「世話係みたいな感じ」。切れ者のヤクザのはずなのに。世間ずれしていないヒナの好き勝手な振る舞いと、それに律儀に付き合わなければいけない新田の苦労。彼を見ていると、ツッコミ役は苦労人なんだなと思わずにはいられませんね。とにかく苦労をしっぱなし。
全体を通して、世間ずれしていないヒナに周りが振り回されるギャグなのですが、その中で妙に真面目になって、筋の通し方だとか、人が人に気持ちを伝える方法だとか、あるいは新田のもとに転がり込む前のヒナの過酷な生活を案じさせる描写を混ぜてきます。でも、言ってること、やってることは真面目になるのに、その中心になるのがThe傍若無人ことヒナなのだから、傍から見ている新田やヒナのクラスメートは困惑しきり。もちろん読んでるこちらも笑うことしきり。いくら真面目になってもどこかずれているその様子は、テンションがぐっと上がるような笑いではなく、「くっ」と顔を俯かせ笑いを反射的に噛み殺してしまう類のもの。なんだか癖になる笑いです。
人の感情を表すのに目は重要だと思ってましたし、村田雄介先生も言ってたことではあるのですが、瞳の大きさや位置がかなり影響するのですね。小さい瞳、大きさの変化しない瞳は、登場人物の表情から著しく生気を奪います。普通なら登場人物の顔に生気がないなんてのは大きなマイナスなのですが、この作品の場合、すっとぼけたセリフ回しとあいまってそれが効果的に働いている。別世界の喜劇を見せられているようで、不思議なテンションのおかしさになるのですよ。
1巻の終わりで、また新たなサイキックの登場人物が現れました。きっと彼女も世間ずれしておらず、念動力と非常識で他のキャラクターを困惑の渦に叩き込んでくれるのでしょう。2巻は11年11月14日発売予定。実に楽しみです。
FELLOWS!
こちらの左下のリンクから一話を試し読みできます。是非一読あれ。


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