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キュートでシニカル、スマホ片手のトイレの花子さん「ハナコ@ラバトリー」の話

ハナコ@ラバトリー(1)(CRコミックス)

ハナコ@ラバトリー(1)(CRコミックス)

現代のトイレの花子さんは、スマホ片手にブログを更新。そこかしこのトイレに現れては、顔をあわせる人や幽霊と世間話をしたりなんだり。今日も彼女はトイレをさまよっているなう。


ということで、施川ユウキ先生原作、秋★枝先生作画『ハナコ@ラバトリー』のレビューです。
『がんばれ酢めし疑獄!!』や『サナギさん』、『12月生まれの少年』でお馴染みの、事象の当たり前さを疑う目を持つギャグ漫画家・施川先生と、『煩悩寺』や『純真ミラクル100%』でお馴染みのラブコメスト・秋★枝先生によるマリアージュということで、想像していた以上のキュ−トさと人情味が溢れておりました。
主人公であるところの、幽霊・トイレの花子さんは、いつからこうして幽霊をやっているのかもわからない、「トイレという記号に縛られた地縛霊」。だから、学校のトイレだけでなく、公衆トイレ、トイレ付きユニットバス、廃墟になったトイレ、道端にあるような仮設トイレ、果ては動物のトイレである電信柱じゃなくて電柱にだって現れます。だから、意外に舞台が広いし、人や動物、あるいは別の幽霊との出会いなんかもあるわけです。
出会った人たちは何かしら悩みを抱えているのですが、必ずしもトイレと関係あるわけではなく、恋の話や、自分が普通すぎることや、読者が見えない小説家や、色々です。それをさして親身になるでもなく、なんとなく聞く花子さん。だって自分は幽霊だし、何が出来るわけでもないから。でも、話をする人はそれでだいたいよかったりします。ときおりウイットの効いた合いの手を入れながら、ただ話を聞いてくれる。何か答えが欲しいのではなくて、ただ話を聞いてもらうだけでいいなら、そんな人のほうがいい。人じゃないけど。
花子さんは、トイレから出ることは出来ませんし、どこのトイレに現れるかも自分ではわかりません。そして、自分が幽霊であることは自覚している。それは寂しいことでもあり、それなりに楽しいことでもあり。作中の言葉を借りれば、「行きたいところにも行きたくないところにも」いけない「自由じゃない」身の上ではあるものの、「車窓から景色を眺めているだけでも 充分に旅は楽しめるから」。人や幽霊との出会いは彼女にとって楽しみであり、それを簡潔にまとめてブログにアップするのもまた楽しみ。まったく新機軸な花子さんです。
話の作り方も、ほんのりミステリ仕立てだったり、ほんのりジンとさせたり。事象の当たり前さを疑うことでネタを作り上げる異色なギャグの陰に隠れやすいものの、『もずく、ウォーキング』や『森のテグー』で垣間見えていた施川先生のショートストーリー作りの上手さが、秋★枝先生のスマート&プリティな絵によって、いつもと違う形で表れているのですよ。1話や4話の叙情性には寂しげな表情を描くのがとても上手い秋★枝先生の魅力が詰まっていて、私のオッ気に入りの話でもあります。ストーリー性の妙ゆえに、ギャグの濃度は施川先生の他作品より薄くなっている印象はありますが、それは単にバランスの問題。その分の巧緻なストーリーです。
施川先生のファンと秋★枝先生のファン、両方が楽しめる作品になっていると思います。二人とも好きならなお良し。
個人的には、施川先生のこういうストーリーものの作品をもっと読んでみたいですですよ。


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