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サッカーにまつわる清新な群像劇「1/11 じゅういちぶんのいち」の話

1/11じゅういちぶんのいち 1 (ジャンプコミックス)

1/11じゅういちぶんのいち 1 (ジャンプコミックス)

ジャンプSQ.19で連載中の、サッカーにまつわる連作漫画です。サッカー漫画というより、サッカーにまつわる漫画。1巻で主役になるのは、サッカーの腕(脚か?)に自信があったものの、別次元の相手と戦ったために中学卒業を期に見切りをつけてしまった男の子、厳しい父親の目を盗んでサッカー部のマネージャーをやっている女の子、イケメン面のおかげで適当にやってても人生が楽しいおかげで本気になれない男の子の三人。それぞれがぞれぞれに、もやもやしたものを抱えて学生生活を送っているのですが、その話の軸に、あるいはパーツにサッカーがあるのですな。ですから、もうちょと正確に言えば、「サッカーにまつわる青春群像劇」となるでしょうか。2,3話は、1話の主人公が進学先の高校で新設したサッカー部を舞台に話が進むので、群像劇的な性格はいっそう強いでしょう。
なにはともあれ素晴らしい完成度なのが、第1話。
上でも軽く触れましたが、主人公・安藤ソラは、子どもの頃からサッカーに自信があって、友達が言ってくれた「いつかはプロになれる」という言葉を胸に日々練習を重ねてしました。ですが、中学に入って大きくならない体格に悩み、ついには中学最後の大会であたった相手チームにいた、まるで別次元のプレイヤーを目の当たりにして、サッカーを続けることを諦めてしまいました。進学校へ進学したために春休み中も勉強を怠らない彼ですが、サッカーが好きだという気持ちまでは消せず、弱冠15歳で日本代表入り、アメリカリーグへの移籍も決定した女子選手のニュースを見て、うずうずとサッカーの虫が騒ぎ、気晴らしにとボールを持って外へ飛び出します。自転車を漕ぎ、いつもの川原へ着いたと思ったら、目の前には一人の女の子。慌ててハンドルを切るも土手に転がり落ち、なんとか顔を上げると目の前にはさっきの女の子。なんとその女の子は、さっきニュースで見たばかりの日本代表・若宮四季だった……。
とまあこんな導入なのですが、才能というやつに悩む少年と、才能とはいったいなんなのか、サッカーとはどんなスポーツなのか、ということを、ちょっとしたミステリ的な構成で見事に描いています。
他の二編は、この第1話に比べれば構成は普通、言ってしまえばかなりベタな内容ではあるんですが(まあ内容自体は第1話もベタではありますが)、不思議と新鮮な印象。それはきっと、ベタの上にちゃんとステロタイプではない世界を築いているから。話の核、つまり主人公たちの青春のもやもやは今まで先人が何度も手をつけている類のものではありますが、その中に独自の構造、独自の見解、独自の解釈がきちんと入っているから、見慣れたものでありながら目新しさを憶えるのです。
第1話が以下のリンクで丸々読めますから、まずはそれをどうぞ。そして気に入ったのなら、買って損はないと思いますよ。
集英社・試し読み 1/11 じゅういちぶんのいち
コミックスを買ったら、第1話を読んでから裏表紙を見てみてください。とても味わい深いものがありますよ。
ちなみに、作者が講談社アフタヌーン四季賞で佳作をとった作品も同時収録です。こちらはエロスギャグ短篇といった趣です。別にエロくはないです。




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