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芦奈野ひとしの光溢れる色遣いと「寂しい」空の話

カブのイサキ(2) (アフタヌーンKC)

カブのイサキ(2) (アフタヌーンKC)

ようやく出ました「カブのイサキ」第二巻。よもや本当に年一刊行とは。あわせて「ヨコハマ買い出し紀行」の新装版も刊行されました。あざとい。講談社あざとい。
カブのイサキ/芦奈野ひとし/講談社 - ポンコツ山田.com
一年前に「カブのイサキ」のレビューはしましたが(この時に「ヨコハマ買い出し紀行」の復刊を願ってましたね、自分。一年後に適うとは。ちなみに「ヨコハマ〜」は、古本屋もフルに活用してなんとか全巻そろえました)、今日は「ヨコハマ〜」も含めて、芦奈野先生の作品の魅力をば。


最近改めて「ヨコハマ〜」を全巻通して読んだのですが、何に目を奪われるって、一巻に一話くらいのペースであるフルカラーの話なのですね。
芦奈野先生が描くカラーには、なんというか、光があります。カラー原稿を何で描かれているのかはわかりませんが、彩色された原稿の色の中に光がふんわり紛れ込んで、ぼんやりと光を放っているような。
ハチミツとクローバー」の中でなされた大理石の説明で、「入った光が中で反射をして、表面に出てきているから」*1というシロさんの言葉は、作品の空気を象徴するものでしょう。


毎月23日は、購読率の高い講談社の青年誌コミックス発売日で、今月は「少女ファイト」に「GIANT KILLING」と目玉二つがありますが、そんな中にある「カブのイサキ」はなんとも心をほっこりさせてくれる一服の清涼剤です。願わくば、もう少し刊行ペースが早いことを。






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*1:九巻 p16)というものがありますがまさにそんな感じで、紙の上に書かれた色なのにもかかわらず、そこに光が溶け込んで漏れ出しているような。 スキャナのない私には上手い画像を引用することもできないので、アマゾンの表紙画像で勘弁願いたいのですが、12巻なんかはそれがよく出ていると思います。

ヨコハマ買い出し紀行 12 (アフタヌーンKC)

ヨコハマ買い出し紀行 12 (アフタヌーンKC)

まあこれでもかなりわかりづらいので、是非実物を手にとって見ることをお勧めしますが、この淡雪のごとくに儚げで柔らかな色遣いは、とても美しいものです。 また、その色遣いの素晴らしさがもっとも顕著に出ているのは、空の色でしょう。芦奈野先生の描く空は、高く透明で光に溢れており(明るいという意味ではなく)、見ているだけでそのまますうと吸い込まれてしまいそうになる、ちょっと変な言い方ですが、とても悲しい空なのです。7巻61話「紅の山」の空など出色の出来栄え(文字通りですが)で、夕立直前の黒々とした雲から覗く真っ青な夏の空の色の対比と、薄くなったところに日が当たって紫がかった夕立後の入道雲は、私の心ぎゅむっと握り締めました。 ただのパステルカラーとは違う、透明感と遠さと寂しさが同居した色遣いは、是非一度は見てもらいたい。
その色遣いに象徴されるような芦奈野先生の作品の魅力を端的に表すなら「淡旨」というやつです。「ヨコハマ〜」も「カブのイサキ」も、描かれている世界は蓋がないかのように緩やかで開放的なもので、読んでいる人間をそのゆったりした世界観の中に浸らせていくのです。特に今作「カブのイサキ」は、飛行機がキーとなって作品中を駆け巡っていますが、空を飛ぶ爽快感のような動的な感動ではなく、広々とした空を漂う浮遊感のようなある種、静的な感覚を読み手に与えます。 「風に流れながら飛んでいく」軽く小さな主人公機・パイパー・スーパーカブと、「うちのカブに乗るときは、目的地なんか二の次だからね」((1巻 p163