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目は口ほどにどれくらいものを言うのか、「少女ファイト」で考えてみようという話

少女ファイト(5) 特装版 (プレミアムKC イブニング)

少女ファイト(5) 特装版 (プレミアムKC イブニング)

ヨヲコ先生の描く表情の豊かさについては今まで何度か触れていますが(「少女ファイト」に見る、「子供」、「少女」、そして「乙女」への成長 - ポンコツ山田.com 日本橋ヨヲコに見る、非対称の表情の味わい深さ - ポンコツ山田.com)、今回は特に目に着眼してみた話をば。


少女ファイト」の主人公・大石練は、作品開始時点で中学三年生。連載当初の彼女は姉を喪って以来の悲しみに囚われており、さらには小学生時代のバレー部の友人達に裏切られた過去を持っているために、人間関係に壁を作って過ごしていました。バレー推薦で進学した白雲山中学でも、バレーに本気になることもせず、親しい友人を作ることもせず、目的のない漠とした日々を過ごしていました。
それを、練習試合での怪我、退部、姉の墓の前での陣内笛子との出会いを経て、黒曜谷高校への進学を決意し、そこで出会ったチームメイト、監督コーチ、なにより幼馴染である式島滋・未散兄弟のおかげで、姉の死から停まっていた彼女の時間が動き出しました。


現在5巻まで発売している「少女ファイト」ですが、1巻と5巻の練の表情を比べると、明らかな違いが見られます。まあ百聞はなんとやらで、例を見てみましょう。

(1巻 p30)

(1巻 p35)

(1巻 p100)
これらが1巻、つまり高校に入学する前の練の表情です。怒った顔、困惑した顔、照れ笑いの顔と取り揃えてみました。
で、次が5巻でのものです。

(5巻 p56)

(5巻 p90)

(5巻 p122)
照れ笑い、喜び、思案顔とチョイスしてみました。
どうでしょう、練の表情の差が一目瞭然ではないでしょうか。1巻の時の固い表情に比べ、5巻の顔の方が情が深そう、人間味がありそう、有り体に言って可愛いのが見て取れます。
1巻と5巻の練の顔で何が変わったかといえば眼球の中の黒目の占める割合で、高校に入学してからの練は、ぐんぐん黒目が大きくなっていきます。昔は白目の中にもう一つ黒目を入れられそうだったあの眼球が、今ではすっかり黒目が大勢を占めるようになって。
1巻の時点では自分のことしか考えられなかった練の心は、5巻の時点では誰かを思いやれるまでに成長したのですが(56pの画像はまさにそれを象徴的するシーンです)、その心の余裕の変化は「大きくなった黒目」という形で現れる外見上の印象ににじみ出ているのです。
黒目の大きさ一つでここまで印象が変わるというのも、なんだか不思議な感じです。


ちなみに練には「狂犬モード」と呼ばれる、バレーに強く集中した状態がありますが、その時の練の目は、昔の小さな黒目に戻ります。

(4巻 p174)
下のコマの瞳孔の開きに注目してしまいがちですが、上のコマの黒目の小ささにも注意してみてください。4巻の後半では練の心も雪解けを迎え(滋とのムフフもありましたし)通常時は5巻同様の黒目の比率なのですが、「狂犬モード」ではその集中力のせいか、他者への余裕がすっかり薄れます。その集中の度合いも、やっぱり黒目の大きさで見て取れるわけで。


ことほど左様に目はキャラクターの心理状態を明瞭に表すのですが、ヨヲコ先生はその表現方法をよく心得ているなと思います。目は口ほどにものを言うとは言いますが、ヨヲコ先生の描く目は実に雄弁にキャラクターの心情を語っているのです。






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