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「『楽しい』は正義」に到るための「あまんちゅ!」の物語構造の話 あるいは「あまんちゅ!」と「ワンピース」の意外な共通項の話

あまんちゅ!(1) (BLADE COMICS)

あまんちゅ!(1) (BLADE COMICS)

「いつもムダに明るい」地元のダイバー少女・小日向光と、引っ越してきたばかりの内気な少女・大木双葉。双葉は光と席が前後になった縁から、強引にダイビング部に入ることになる。
FUN for ALL.ALL for FUN
二人の「楽しい」に溢れた高校生活が今始まる……


天野こずえ先生の最新作、「あまんちゅ!」です。
天野節というか、恥ずかしいセリフ節というかは、あいも変わらず健在で、読んでてテレテレタッハーとなるようなシーンがてんこ盛りです。


まあそれはそれとして、おそらくこの漫画を紹介しようとする人なら誰もが使うであろうフレーズが、「『楽しい』は正義」。前後を含めて引用すれば

泣いても笑っても あっという間の高校三年間
どうするかは主役の君達次第
勉学に励むもよし 部活に精を出すもよし ひたすら遊び倒すのもOK!
一番大切なのは この学び舎で 三年間君達自身が毎日を楽しむことです
「楽しい」は最強っ
「楽しい」は正義っ
そして「楽しい」は無限大!
これから三年間 たらふく食べて たらふく寝て たらふく楽しむようにっ

あまんちゅ! 1巻 p84〜87)

光たちの担任であり、ダイビング部の顧問でもある火鳥真斗の言葉ですが、天野節全開ですね。
このセリフの登場が第三話なのですが、このシーンが本作の今後の方向性を完全に指向していると言ってもいいでしょう。
なによりかにより高校生活三年間を楽しみ倒すこと。
それが「あまんちゅ!」の根幹と言い切ってしまっても、問題ないのではないでしょうか。


そう当たりをつけてしまうと、以降のお話というのは、このテーゼをひたすら立証するためのものであると考えられます。現段階で入学したての高校一年生、高校生活全体のおおよそ1/157です*1。色々なイベントがあるでしょう。時には悲しいこともあるでしょう。ですが、その全てが最終的には「『楽しい』は正義」に収斂するはずです。
以前の記事で、単純な言葉の中に万感の意を込めたいなら相応の「物語」の蓄積が必要である、というようなこと(今はかなり意訳してまとめましたが)を書きましたが、それとは逆に「あまんちゅ!」では、この火鳥の言葉に説得力を持たせるために後々のエピソードがある、って形だと思うのですね、物語の構造的には。
前者が帰納的に言葉に説得力を持たせているのだとすれば、後者は演繹的に言葉に説得力を持たせている、と言ってもいいです。
こういう風に、テーマをここまで明瞭に提示する日常系(非ファンタジー)作品てあんまりないんじゃないかな、という気はします。まあコミックブレイドやガンガン、スクエニ系の作品はほとんど読んでないので、実は普通にあるのかもしれませんが、私が持ってる本の中じゃ珍しいのは確かです。


で、さらに物語の構造という点で敷衍して考えれば、「あまんちゅ!」のそれは「ワンピース」なんかと一緒なんです。意外なことながら。
「ワンピース」(主人公であるルフィ)の目的は、海賊王になること。「海賊王に俺はなる!(ドン!)」てなもんです。このこのルフィの態度も物語の最序盤から提示されており、以降の物語は全てその目的に沿ったものとなっています。今までを見ても色々紆余曲折はありますが、最終的な到達点がそこからぶれることはないでしょう。
ルフィが海賊王になる(ワンピースを見つける)ための物語である「ワンピース」と、「『楽しい』は正義」に説得力を持たせるための「あまんちゅ!」。両者とも、最初に提示したテーゼを完遂するための物語。その構造は一緒。




しかし、私が海なし県で生まれ育っているからか、海に対する憧れってのは大きいですね。関東でも千葉とか神奈川に住んでいる人なら、海なんて日帰りで行ける気軽なものでしょうが、群馬だと宿泊前提です(ちなみに我が家は新潟派でした)。
光のこのセリフ

…海の中ってね
始めのうちは自分の呼吸音しか聞こえないんだけど それがだんだん海に溶けてくの
どこまでが身体でどこからが海なのかわからなくなる感じ
そんな時ね わたしわかっちゃうんだ
ああ みんな海から生まれてきたんだなあって

何てね(はあと)

(同書 p118,119)

は、憧れを通り越して恋焦がれです。さぞ気持ちいいのだろうなあ、と。


ちなみに海洋巨大生物や深海生物なんかも大好き。海すげえ。






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*1:週で計算。四月第二週からの新学期、卒業式は三月一日と仮定