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いい歳こいて新しいことを始める人に向ける、理屈と経験と実践の話

最近になって、お絵描きという趣味を新たに始めて思ったこと。
絵に限らず、いい歳してから何か新しいものを始めてみた時は、単純に練習などを重ねるよりは、ある程度理屈を考えながらやった方がいいと思います。絵でも音楽でも料理でもスポーツでも、この失敗はなぜ起こったのか、この成功は何がよかったのかなどなど、自覚的・反省的になりながらすることで、技術は飛躍的に向上するでしょう。
「いい歳」というと、まあ大学をでて社会人になってしばらくして、以降ですかね。逆に言えば、まだ若いうちはあんまり理論中心に学んでも活かしきれないと思います。


やっぱ理屈で以って自らの技術に研鑽を重ねるっていうのは、世の道理がいくらかわかってないと出来ないと思うんですよ。理屈や理論てのは先天的に存在していたものではなくて、実際に行われてきたものを集積、洗練させて築いた帰納的なものですから、まだものの仕組みもわかっていないのにいきなり具体性のない理論を学んでも、結局それがどう実践で活きるのかがわかりません。
私は大学在学中、ジャズ研の先輩から「アドリブを吹けるようになりたければ、プロの演奏の耳コピを50曲もすれば勝手にできるようになるよ」と言われました。これは、とにかく曲を聴いて反復練習することで、コード理論の理屈に頼らずとも自然と「こういうコードではこういうフレーズが使える」という感覚が身についていくということだと解釈しています。
ジャズ初心者が、実際にどのようなアドリブが吹かれているのかをよく知らずにアドリブの理屈を学んでも、「で、どうすればいいの?」ということになってしまいます。「鄱-Ⅴの進行ではドリアンスケールが使える」と言われても、そのコード進行がどういう響きを持っているのかがわからなければ、そしてドリアンスケールがどんなニュアンスを持っているのかわからなければ、納得のないまま練習をする羽目になってしまいます。それでは上手くなれっこない。それよりは、「聴いて吹く」という実践的な練習を重点的にした方が、文字通り「身につく」のです。


ですが、ある程度齢を重ねると、色々なことに共通するものごとの仕組みが見えてきます。仕組みと言うか、勘所と言うか。仕組みの全体を俯瞰することが出来る、と言ってもいいでしょう。仕事でも趣味でも、何かに真剣に打ち込むとそういうものが見えてくるのです。
そうすると、新しいことを始めても理屈を自分で発見できる。どうすればいいかが見えやすくなってくる。自分の練習を俯瞰で考えることが出来る。というか、そうなれないと歳をとった甲斐がない。
歳をとればどうしたって頭の回転や記憶の容量は若い頃に比べて落ちてしまいます。それでもなお亀の甲より年の功と言われるのは、経験を積むことで応用の利く自分なりの法則性や構造を見つけられるているからです。知識ではなく知恵というわけですね。


一応改めてまとめます。
「考えながら練習しろ」というの自体はよく言われることですが、それが意味するところはたいていの場合、「自分が今何をやっているか自覚的になれ」ということだと思います。ですが、私がここで言っていることは「自分が今していることが、その分野の体系の中でどのように位置づけられるか、他の要素とどのような関係性を持っているか、推測しろ」という意味です。似ているようでちと違う。
前者では「考えながら」の対象になるのは今まさに自分がやっていること単体です。音楽ならスケール練習とか、絵ならクロッキーとか。
Cmajorスケール練習をしているときに、音は均一にでているか、音程はずれていないか、テンポから外れていないかなどと考えながらやるのはとても大事です。それをするとしないでは、上達のスピードが段違いでしょう。
で、後者で「考えながら」の対象になるのは、その自分がしている練習のその分野内での関係性です。
この練習をすることで自分はなにが出来るようになるのか、この練習が他の練習とどう関連付けられるのか、この練習をこう変えればこんな感じになるのではないか。
具体的には、Cmajorスケールを一音飛ばしでやればどうなるか、フラットを三つつけたらどうなるか、C上とDm上ではどのようにニュアンスが変わるかなどなど。
そんなことを考えるのが、「仕組みや理屈を自分で発見する」ということです。これをすると、その練習自体の習熟以上に、分野そのものへの習熟が早くなる。手っ取り早く言えば応用が利きやすくなるんです。
練習内容単体だけではなく、他との関連性を考えられる思考の射程の長さが、年の功のいいところなんだろうなと思います。脳味噌の柔らかさが喪われた分だけ、若さに対抗するにはこういうところを使ってくしかないわけですよ。






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