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「みつどもえ」に見る、日本の漫画の読み方とコマ運びの兼ね合いの話

みつどもえ 7 (少年チャンピオン・コミックス)

みつどもえ 7 (少年チャンピオン・コミックス)

基本的には、日本の漫画は右から左へコマを読み進めていくものだというのは何度か書いていますが、それを生かしたコマ運びが「みつどもえ」7巻ではあります。

みつどもえ 7巻 p63)
このコマの流れでは、時計回りにテーブルの天板を回転させたために、ケーキが向かって右から左へ移動し、それが右から左へと読み進める読み手の視線移動とシンクロするのです。
最小限の効果線しか使わなくとも、真ん中のコマと左側のコマを同じ構図にし、視線の移動とケーキの動きをシンクロさせることで、コマ間のつながりと動きを表現できているのです。

ですが、同じ話の中では、むしろその法則に反するコマ運びもあります。

(同書 p65)
反時計回りに回転した天板と、左から右へ移動するケーキ。上の画像と比較すると、どうしても幾許かの違和感を覚えてしまうのではないでしょうか。あるいは、上の例があるからこそ違和感をより感じてしまう、という方が正しいのかもしれませんが。いえ、さらにひっくり返して考えれば、上の画像が先に登場しているからこそ、ケーキの動きと視線移動が真逆になっていても、先のコマ運びの援用で脳内で同様の処理ができているのかもしれませんが。
これは、先ほどとは天板の回転が逆になっているために、そうならざるを得ない必然的なコマ運びです。ここでケーキの移動と読み手の視線をシンクロするコマ運びにしようと思えば、ケーキを食べようと待ち構えるみつばは後頭部からのカットになってしまいますから。

で、さらにもう一つある例を。

(同書 p86)
このコマ群ではみつばは書初めをしているのですが、キャラ移動と視線移動のシンクロを考えれば、みつばの移動方向はそっくり反対になった方が都合がいいはずです。画像では切れていますが、この下に描かれているコマ群との対応を考えても、それら全部をひっくるめて反対の向きにしても問題はないでしょう。もし半切に書かれた文字と効果線がなければ、みつばがどちらに向かって動いているのかぱっと見でわかりづらいんじゃないでしょうか。
ならば、なぜあえてこのような向きで描かれているかと考えてみれば、この前ページに描かれているみつばの向きのためだと思うのです。

(同書 p85)
これは126卵生の最初のページになるんですが、「みつどもえ」では、基本的に最初に大きく登場するキャラは、皆一様に左を向いています。これも「右から左への読み手の視線移動」を意識したものであり、一番初めに読み手が目にするキャラが左を向いていることで、すんなりキャラの視線と読み手の視線を同調させることができるのです。
おそらく、この最初に登場した左向きのみつばを意識したために、ページまたぎとは言え直後のコマのみつばをそのまま左向きに描いたのでしょう。これをどっち向きに描くかについては、けっこう葛藤があったんじゃないなかなぁと想像します。ページまたぎのコマの連続性の自然さか、一つのネタのコマ運びの自然さか。悩んだ末に桜井先生は前者を優先させたんじゃないかなと。


コマ運びのネタにも、読み手の見えないところで前提として存在する法則がしっかりあって、作り手はそれを意識しながら描いているようで。


時折見られる左送りの漫画だと、そこらへんはどうなんでしょうね。私の持ってる唯一の左送り漫画「進め!聖学電脳研究部」では該当しそうなコマ運びがなかったわん(ちなみに各話の最初に登場するキャラは、概ね正面を向いていた)。






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