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漫画の話です。

客観的な一つのランキングもいいけど、主観的な多くのランキングがあった方が面白いよね

このマンガがすごい!2009」をちろっと読んだんです。まあ順位はどうでもいいっちゃいんです。そこまで異論があるもんじゃありませんから。もちろんないわけじゃありませんけど(「少女ファイト」の順位の低さには納得がいかない)。
企画の趣旨はタイトルの通り、「すごいマンガ」を投票で選ぶってものですから、数値的・計量的に作品の価値を決めてることになります。
それはそれで面白い企画だとは思うんですけど、やっぱ漫画でもなんでも、それぞれの受け手にとって何が面白いかが違うから多種多様な作品が生まれてくるわけですよね。「それらを全部ひっくるめてこれが面白い」ってのを決めるには、当然選者には相当以上の読書量が求められます。少年漫画しか読まない人に劇画の面白い作品は選べないし、恋愛物しか読まない人にスポーツ作品の面白い作品は選べない。全ての作品とは言わないまでも、だいたいの分野の作品はそりゃあ読んでおいてほしい。各人が網羅している分野にいくらかのブレは出てしまいますが、選者を増やすことで対応はできます。
けど、多くの作品を読んでいる選者の投票でトップを獲ったからって、それが「わたし」にとって面白い作品であるとは必ずしも限らないのもまた当たり前のことだったりします。
結局のところ、多くの選者によって選ばれたランキングは、選者が増えれば増えるほど、ある意味でそのランキングが正確になればなるほど、結果がmassのものになってしまうんですよね。選者がmassの中に溶け込んでしまうというか、選者の匿名性が強くなってしまうというか。
一位の作品は何人(何%)の人がトップに挙げたとか、順位のポイント制なら合計で何Pを獲得したとか、そういう数値的な価値ばかりが前面に出て、この作品を一位に挙げた人は他にどんな作品が好きなのかがわかりづらい。本当に自分にとって面白い作品に出会いたいと思う人には、massによる作品の順位よりも、顔の見えるレビュワーのお薦めの方が役に立つんじゃないかなと。
「顔の見える」ってのはまあ比喩表現で、要はその選者の好みを自分が知っているか、あるいは選者が自分の好みを知っているかってことです(後者は実際に双方向的な交流がある人同士の場合で、今回のようなケースとはちょっと違いますけど)。
このマンガがすごい!」では、巻末の方で各選者個別のランキングをベスト6まで掲載していましたが、あれにもっと紙幅を割いてもいいんじゃないかと思います。ベスト10くらいまでと、各作品についての説明をもうちょっと書かせたほうが、読み手が自分に合うであろう作品を探すのが用意になるんじゃないでしょうかね。
たとえば選者が10作品を推薦するベスト20のランキングの内、「1,3,6,7,10,11,13」位の作品を推したAさんと、「5,9,14,19,20」位の作品を推したBさんがいたとしましょう(ランキングから漏れた二人の推薦作品は公表されていません)。ランキングの結果だけを見れば、Aさんの方がランク内のより高位の作品をより多く推していたわけで、その意味でAさんの方が「見る目がある」ってことになります。ですが、ランキング内でCさんが好きな作品はBさんが推していたものばかり。そのときCさんが知りたいのは、Aさんのほかの推薦作品より、Bさんのそれでしょう。
こんな具合で、企画の趣旨そのものは大前提であるものの、そことはちょっと脇道に逸れる形の「それはそれとして、自分が楽しめそうな作品はなんだろう」と考える時には、選者それぞれのこまかい情報、意見があったほうがいいんじゃなかろかって話です。漫画を読む(「小説を読む」でも「映画を観る」でも「料理を食べる」でも、なんでも入れ替えてください)人間にとって、客観的な「すごい作品」を知るよりは、主観的な「すごい作品」と出会えるほうがよっぽど重要なことだと思います。そりゃ自分の好きな作品をみんなも「すごいすごい」「面白い面白い」と言ってくれるのは嬉しいもんですけどね。


かくいう私もこの企画に参加させていただいているわけで。
『このマンガが凄いから読め!(仮称)γ版2009』
選者の数が少ないとどうしても票がばらけてしまいますが、選者が多ければ個人でやるにはあまりにも大変すぎる。非常に大変な企画です。
それはそれとしてのこの企画の利点は、なによりかによりネット媒体で全て行われるということ。もちろん主催者サイトでランキングが発表されるわけですが、そこからリンクを貼るだけで各選者がどの作品を選んだのかがすぐわかるって寸法です。「自分にとって」面白い作品を探したい人にとってはこれはありがたい。この企画の参加資格に「今年に入って20作品以上レビューをしている人」というものがありますから、選者の過去記事を漁れば他にどんな作品が好きなのかがすぐにわかります。ですから、ランキングそのものよりは、漫画読者の裾野を広げるためにこの企画はとても役に立つだろうなと思います。


既に私はこの企画のベスト5(プラス五作品)は過去記事で発表したのですが(『このマンガが凄いから読め!(仮称)γ版2009』ランキング - ポンコツ山田.com)、この際ですからもう10作品ほど挙げてみましょうか。特にランキングとは関係ないですが、単純に私が好きな作品で、企画のノミネート資格である「2008年中(12月31日まで)に新刊コミックスが1冊でも発売されたタイトル」に絞ります。
要は自分が好きな作品がけっこうかぶってたら、他の未読の作品にちょっと騙されてみろってことです。レビュー的なものは苦手なのでざっくり紹介だけします。過去記事があればそのリンクも。ちなみに面白さは順不同なので。

魔人探偵脳噛ネウロ 19 (ジャンプコミックス)

魔人探偵脳噛ネウロ 19 (ジャンプコミックス)

ジャンプらしくないギャグぷりが好きです。真面目な不真面目さがよい。うんちくものって好きなのですが、これは服飾うんちくプラス江戸っ子的義理人情噺。ギャグもストーリーもベタがいい。
サナギさん 6 (少年チャンピオン・コミックス)

サナギさん 6 (少年チャンピオン・コミックス)

発想力&言語センス4コマ。ゲラゲラというよりは唸る感じ。ハルナさんはかわいい。
「サナギさん」に見る、終わらない日常の中の「終わり」の視点 - ポンコツ山田.com
「サナギさん」に見る、タカシくんのツッコミの変遷 - ポンコツ山田.com
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「サナギさん」に見る、日本の漫画システムとカメラの移動 - ポンコツ山田.com
ずいぶん記事書いてたんだな。
くおんの森 (1) (リュウコミックス)

くおんの森 (1) (リュウコミックス)

最初はとっつきづらいかもしれないけど、じっくり読んでいると段々トリップしてくるビブリオマニア・ファンタジー。すごくいい意味でファンタジー。幻想的な意味で。
「くおんの森」に見る、越境する絵、混交する頁 - ポンコツ山田.com
「くおんの森」のモリ性別誤認疑惑、改め、越境するキャラたち、混交する世界 - ポンコツ山田.com
宇宙兄弟(3) (モーニング KC)

宇宙兄弟(3) (モーニング KC)

宇宙飛行士になった弟に劣等感を覚えながらも、葛藤を経ながら宇宙飛行士になろうとする兄の話。
「このマン」でもランクインしてますね。三巻になって俄然面白くなった。待ってて良かったという感じ。
3月のライオン 2 (ジェッツコミックス)

3月のライオン 2 (ジェッツコミックス)

やっぱり「このマン」でもランクインしている、高校生棋士の話。将棋漫画というより人間ドラマ。感傷的な作品はあんま好みじゃないけど、これはなぜか好き。
「3月のライオン」の「優しさ」。あとタイトルについて。 - ポンコツ山田.com
ネムルバカ (リュウコミックス)

ネムルバカ (リュウコミックス)

石黒先生の暑苦しさがいい意味で煮しめられている作品。「それ町」と併せて読むとまた面白い。
「ネムルバカ」と石黒正数のもつ二つの柱 - ポンコツ山田.com
水上悟志と石黒正数の熱い主張 - ポンコツ山田.com
月光条例 3 (少年サンデーコミックス)

月光条例 3 (少年サンデーコミックス)

女の子がめちゃくちゃかわいくなってる。エンゲキブかわいいよ。一寸法師の姫かわいいよ。
あと過去作品からゲストがけっこういたり。挙げた中で一番「大人から子どもまで」楽しめる作品だと思う。
百舌谷さん逆上する 1 (アフタヌーンKC)

百舌谷さん逆上する 1 (アフタヌーンKC)

ツンデレ」をコメディで処理するくせに重さもある。長期連載にはならなそうだけど、その濃さがいい。


まあこんな具合でしょうか。
対象作品以外も含めるとかなり偏りがでてしまいますので、こういう縛りがあるほうが新規開拓はしやすいですよね。
合計で20作品を挙げたわけですが、数の都合上入れられなかった作品、今年に新刊が発売されていない作品もあるわけで。そういう作品群なら、過去記事で主題にしてるものであれば概ねお薦めですので、ざっとタイトルを眺めるだけでも参考になったら幸いです。








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