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そこをなんとか/麻生みこと

そこをなんとか 1 (花とゆめCOMICSスペシャル)

そこをなんとか 1 (花とゆめCOMICSスペシャル)

急激な司法制度改革のために、エリートであるはずの弁護士が大量にあぶれるという事態が発生してしまった。新米弁護士・改世楽子(愛称;らっこ)もそんな一人。脱・貧乏を目指し、奨学金とキャバクラバイトでお金を稼ぎつつ、ストレートで弁護士になれたものの、ド大手の事務所から町の零細事務所まで、どこも雇ってくれない。最後の望みを託して彼女が訪れたのは、キャバクラのお客だった弁護士さんの小さい事務所。「受かって、どこにも雇ってもらえなくて、お酒の飲み比べで勝てたらうちにきなよ」という約束を信じて出向いたのだけど……


good!アフタヌーンで「路地恋花」の連載を開始した麻生みこと先生の、白泉社「メロディ」での連載作品。「路地恋花」が面白かったので買ってみました(「路地恋花」のざっくりレビューはこちらの上1/3のあたりに。good!アフタヌーン全連載ざっくりレビュー )。
たしか今年に入ってから、弁護士もののドラマが多くあった気がしますが、この作品の開始は去年の春頃で、いくらか時代の先を行ってましたね。
一話が50pほどあり、ボリュームはたっぷり。一冊に収録されているのは4話。まあ隔月誌なので、年二冊以下のペースではあるんですが。
ジャンルとしては「法律コメディ」。他に法律ものの漫画だと、「カバチタレ」や「家栽の人」、「弁護士のくず」、「逆転裁判」なんかがありますが、作者が女性で連載が女性マンガ誌だけあって(と言っていいのやら)、絵の柔らかさが違いますね。
法律面は、本職弁護士が監修についているだけあって、きっちり扱っています。つーか、ちょっと法律をかじったくらいで作品にしたら、そこかしこからクレームが来るとは思いますから、それは当然ちゃ当然。
で、その法律系の内容は、取り扱われる事件等は平易に描かれてはいるんですが、詰め込みすぎて言葉足らずになることがときたまあるので、もうちょっと余裕ある説明をしてもいいんじゃないかなと思ったり。民法/刑法、民事訴訟法/刑事訴訟法の差をどこかではっきりさせた方がすっきりするとは思います。まあわかるといえばわかるんだけど。あと、欄外の豆知識で法律用語の補足等もあるんですが、その補足がわかりやすくないという罠。例えば「限定承認」の説明が

相続によって得た財産の範囲内で借金等の負債を負担する条件つきで相続を承認すること。
原文ママ

です。これは一読するだけじゃピンとこないだろ。
条文の文体を簡易にするだけでは、法律用語の意味ってわかりづらいと思うんだ。「つまり何を言っているのか」を具体的に書いたほうが、たぶんわかりいいです*1


物語的には、主人公が苦労人のくせにフランクな人間なので、わりと生々しいこと、泥臭いことをさらっと描いても流せる感じがあります。司法制度改革の裏側を描いた上、コメディにするんですから、そういうキャラで正解でしょうね。
基本の人間が、主人公、男の先輩弁護士(いわゆるアニ弁、イソ弁)、事務所の名義の弁護士(いわゆるボス弁)で、そこに依頼者が入って物語を転がす形です。一話読みきり系の人間模様コメディ。いまのところ、「家族」テーマが多いです。傷害の被告人とその妻、離婚と親権、遺産相続てな具合ですね。


これを読んで法律のことがよくわかるとは思いませんが、弁護士が少し身近に感じられるとは思います。華やかそうだったり、高給取りだったりするように思える弁護士ですが、必ずしもそうではありません。刑事事件で被疑者の無実を証明したりするのなんて訴訟全体のほンンンンんのわずかだし、高い給料をもらうのは馬車馬のように働くからだし(大企業の顧問弁護士などになればまた別だけど)。基本的には地味なんですよね、弁護士の仕事って。対人関係能力によるところが、すごく大きいんです。そこらへんが伝われば、かなり成功なんじゃないかなと。


絵柄、特にデフォルメ絵が好きなんで、続刊も買おうかな、と。「路地恋花」も。
しかし、なぜ女性向け漫画のコマ割は、概してアヴァンギャルドなんでしょうね。そして台詞も多い。








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*1:例として、上の「限定承認」を具体的に説明すれば、3000万円の財産と、3500万円の借金を相続した場合、借金を、プラスの相続財産である3000万円分まで払い、残りの500万円については相続しないですむということ