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「GIANT KILLING」と「SLAM DUNK」の共通点

GIANT KILLING(7) (モーニング KC)

GIANT KILLING(7) (モーニング KC)

毎年一部リーグからの降格ボーダーすれすれにいる弱小プロサッカークラブ・ETU(East Tokyo United)。この状況を打開すべく、フロントは新監督を招きいれた。彼の名は達海猛。イングランドの5部リーグのチームを、FAカップでベスト32まで押し上げ、プレミアリーグのチームさえあと一歩のところまで追い詰めたほどの手腕の持ち主。
だが彼は、イングランドに来るときに、かつて在籍していたETUを見捨ててきたという過去を持っている。そうでなくとも問題の多いチームなのに、一度捨てた古巣に戻る達海に風当たりは強い。このチームで彼は「GIANT KILLING(大番狂わせ)」を起こせるのか……?


個人的に、今一番熱いスポーツ漫画です。講談社もかなり推しているようで、今月来月と、二ヶ月連続新刊発売なんかしちゃいます。講談社はそこらへんフレキシブルですよね。「みなみけ」がアニメ化したときも、五巻の発売がかなり早かったし。

で、この「GIANT KILLING」ですが、最近の(なのかどうかはわかりませんが)スポーツ漫画には珍しく、そのスポーツに関係のない描写が非常に少ないと思うんですよ。
恋愛要素であるとか、友情や師弟関係にスポットを当てるだとか、選手がもつプライベートな事情に深く突っ込むとか、そういうスポーツとは直接関わってこない部分が、ほとんどない。
恋愛要素なんて、まともな女性キャラが広報の女の子一人しかいないし、友情も師弟関係もチームメイトの域を出ないし、過去や内面を深く掘り下げられたキャラもいない(ページ数が割かれていない)。主人公が監督だから、試合以外にカンファレンスなどの広報的なシーンもあるけど、それもサッカーにまつわらないことがない。
7巻までで一番サッカー関係ない話は、たぶん一巻の最後の、女性広報が過労で倒れた時の回でしょう。それでさえ、「チームへの愛着」という主題が前景化してきていて、地元密着のプロサッカークラブ(特にECUは親会社を持たず、自治体からの援助に大きく依存している)には欠かせない要素です。
とにかく、極めてサッカーサッカーしている作品なんですよ。


で、この点に気づいたとき、「あ、そういうえば『SLAM DUNK』もプライベートな要素がないよな」と思ったんです。

(註;私にとって「SLAM DUNK」はコミックス8巻で第一部「ヤンキーバスケを始める」編終了となっており(「先生、バスケがしたいです」まで)、ここでは主に9巻からの第二部、「真面目にバスケ編」の話をしています)

31巻の長期連載にもかかわらず、「SLAM DUNK」では各キャラのプライベートがほとんど描かれていませんでした。多少なりとも過去が描かれているのが、ゴリと木暮と三井の三年生トリオで、それだってバスケにまつわるエトセトラ。純粋にプライベートなシーン(バスケに関係ない情報)なんて、中学時代に桜木の父親が倒れていることと、夏休み合宿直前の勉強合宿編くらいではないでしょうか。
桜木の晴子への恋心とか、宮城の彩子への恋心とかは、序盤はともかく、第二部からはギャグ用のエッセンスでしかなくなっていますし、作者は勿論、読者も作中で二人がどうにかなるとは思っていなかったはずです。だって別に必要ないし。
そして「SLAM DUNK」は、そのような作品であることになんの不満も持たせません。単純にバスケ漫画として面白い。それが「SLAM DUNK」の素晴らしいところでしょう。


このように、純粋にそのスポーツを描く漫画の何がいいって、そのスポーツにより深くのめりこめることでしょう。作者は私的な人間関係の描写にページを割かなくていいし、読者は純粋にスポーツの部分で作品を楽しめる。両サイドにとって、この形態はスポーツを楽しむことに都合がいいんです。
ですから、「GIANT KILLING」で、達海の過去について3巻で伏線が張られましたが、個人的にはあれはさらりと流してもらっていいかなと思ってます。興味がなくはないけど、それに紙面と創意を割かれるくらいなら、大袈裟で意外な理由でなくて全然問題ありません。いいです、別に「病気の母親のためにもっとお金が欲しかった」とかでも。



スポーツ漫画をWikipediaでざっと見てみると、知ってる限りでですが、たいていのものはどうしてもそのスポーツ以外の要素が入っているように思います。有名どころを挙げれば「タッチ」や「H2」、「帯ギュ」に「YAWARA」(以前の記事(参考;漫画の「主題」と「題材」 - ポンコツ山田.com)で、前者は柔道漫画であり、後者は人間ドラマであると書きましたが、このことは、「帯ギュ」に非柔道要素があることを排除しません。なにしろ主人公の粉川巧は「愛の力(=彼女の声援)」で劣勢を跳ね返すという離れ技を何度も見せてくれましたから)、「MAJOR」、「シュート」、「キャプテン翼」、「Harlem Beat」(有名か?)、「DAN DOH!!」、「少女ファイト」、「テニプリ」etc.、枚挙に暇がありません。
まあそれはいい悪いではなく、ただそういうスタンスの作品だという話で、純粋にそのスポーツを描いたものって少ないよね、って話です。


ちなみに、「GIANT KILLING」と「SLAM DUNK」以外でなにかあるかなと考えて、なんとか出てきたのが「ペナントレース やまだたいちの奇跡」でした。その次にでてきたのが、「キャプテン」、「プレイボール」の正統派野球もの二本でした。判断に苦しむのは「エースをねらえ!」でしょうか。一回通して読んだきりなので、ちょっと記憶が薄いんです。最近のであれば「アイシールド21」が近いっちゃ近いですが、「主人公の精神的成長」の描写が結構大きいかな、と。「はじめの一歩」も、同様の理由で微妙なラインかな、って感じです。



ま、そんなこんなで「GIANT KILLING」、お薦めです。
引き込まれるよ。






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