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「らいか・デイズ」に見る、磯野家時空の綻び

らいか・デイズ 6 (まんがタイムコミックス)

らいか・デイズ 6 (まんがタイムコミックス)

今月はむんこ強化月間となった私。「らいか・デイズ」と「だって愛してる」を一通り購入しました。
今日の話は、画像も掲げている「らいか・デイズ」についてです。

らいか・デイズ」は、花丸町という架空の町に住む小学六年生・春菜来華を主人公としたお話で、いわゆる磯野家時空の中で物語は展開されます。月刊誌の連載なので、現実の季節とリンクしており、お花見や海水浴、ヴァレンタインなどの季節イベントを何度も繰り返しながら、登場人物は歳をとらずにまた一年を暮らしていくのです。


ですが、そんな磯野家時空の花丸町にも、エンドレスの一年の綻びが少しずつでてきました。
まず最初にそれが顕在化したのは、来華の従兄の安原一。彼の登場は、基本的に年始の帰省イベントの時で、初登場時には大学受験生でした。ですが翌年の登場では大学生となっており、さらに翌年には20歳となり飲酒をしています。同じ学生(まあ法律上は来華は「児童」であり、高校生の一は「生徒」なのだが)である来華は変わらず小学六年生をやっているのに、一だけは着実に経年変化を遂げているのです。
これが最初の綻び。


次の綻びは、妊娠した担任教師・東野麻美です。
俗に妊娠期間を「十月十日」と言うように、子どもを授かって出産するまでには現実に時間を必要とします。6巻の春の時点で妊娠が発覚した東野先生が出産を迎えるのは、早産等を考えなければ翌年の二月付近(本誌ではもう出産したようですが)。そこからもう一年連載が続けば、その子どもは満一歳となりますが、そうなるとさすがに、歳をとったことを描かないのは不自然になります。
赤ん坊は成長と言うものを如実に感じさせてくれる存在ですから、作中でもおそらくそのようなイベントが描写されることでしょう。歯が生えるとか、はいはいしだすとか、言葉を発しだすとか、赤ん坊の成長を表す事件は事欠きません。肉体的な成長はするのに、まだ0歳と言い張るわけにはいかないでしょうから、一年経つごとに赤ん坊の歳は増えていくでしょう。
連載がそこまで続くかどうかはもちろんわかりませんが、このような潜在的な綻びを、彼女の妊娠とともに、文字通り作中に胚胎したのです。
これが綻び二つ目。


最後の綻びは、6巻に収録された特別編「月 〜moon〜」です。
これはコミックエール!の増刊号に掲載されたものですが、来華が初潮を迎えたお話です。
作中で、同級生には「棒きれ」と表現され、実の父には「避雷針」と例えられ、焼き芋屋の親父には「(今年小学校に入学する娘が)君と同じくらい」などと言われ、幼稚園の従妹には「(胸が私と)おんなじくらいだね!」と無邪気に言い放たれるほどに、小柄さ、(肉体的な)女性らしさのなさを酷なまでに強調されてきた来華ですが、ついに大人の階段を一歩上りました。
今まで、主要な登場人物については、一切現れることのなかった肉体的な成長。身体測定の回でも、言及されるのは体重だけ(ダイエットネタという意味合いもありましたが)で、磯野家時空では成長と言うものが存在しないのが常なのです。というよりは、成長しないからこその磯野家時空なのであり、成長はすなわち磯野家時空の崩壊すら意味します。
それは、二つ目の妊娠・出産と出所は同じであり、成長に由来する外形的な変化は、「繰り返される一年」という磯野家時空とは相容れないものなのです。
(実際に「サザエさん」内で最も幼いメインキャラ・イクラちゃんは何年「サザエさん」が続こうと「バブー」と「ハーイ」と「チャーン」しか喋りません(厳密には、イクラちゃんは初登場時から僅かに成長して、二歳の段階で止まっているのですが)。これがもっと言葉を覚え、肉体的な変化も見せれば、いつまでも未就学児というわけにはいきませんから)
これが最後の綻びです。


特に見過ごせないのが、最後のものです。
来華という他ならぬ主人公本人が初潮を迎え、成長しだすと言うことは、物語そのものも変化をせずにはいきません。
以前の記事(参考;「戯言シリーズ」における、主人公とヒロインの関係性 〜最終巻でのヒロイン放置プレイの裏側 - ポンコツ山田.com)で書いた「戯言シリーズ」の玖渚友ではないですが、一度停まった成長を再び動かすには、大きな犠牲を必要とするのです。
6巻の最後に収録されたこの特別編を読んだ私は、もう「らいか・デイズ」が終わってしまうのではないかと危惧してしまいました。折角出会えた面白い漫画なのに。

まああくまで特別編のお話なので、本編では特にその辺の描写をしなければ、問題にはならない気もしますが。
ですが、作品内のエンドレスの時空に綻びが見え始めたのは事実です。できればまだまだ続いて欲しいと思う反面、来華たちが卒業・中学校への入学をすることで、大団円のハッピーエンドを迎えられる気もします。見たいような見たくないような。




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