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きのう何食べた?/よしながふみ/講談社

きのう何食べた?(1) (モーニング KC)

きのう何食べた?(1) (モーニング KC)

ゲイの弁護士・筧史郎は、恋人の美容師・矢吹ケンジと同棲中。そんな彼の楽しみは毎日の料理。仕事の疲れや人間関係のわずらわしさも、料理をしていればふっと楽になる……


料理漫画といえば、美味しんぼクッキングパパミスター味っ子将太の寿司、食いタン、焼きたてジャパン、中華一番、鉄鍋のジャンOH!MYコンブ包丁無宿、料理人味平などなど数多くありますが、今まで読んだ中で最も食べてみたいと思わせる料理を描く漫画です。

上記の漫画の数々では様々な料理が出てきますが、あまり食欲をそそられないのは、基本的にその料理が画餅だからだと思います。あるいはとんでも料理だったり、余計な理屈や政治を絡めたり。
料理、すなわち食事は、なにより人間の生活にダイレクトに関わってきます。どんなに気負っても、料理は料理で食事は食事、根本的に日常の範囲内に収まるものなのです。

幸せな、と言うほどに気負いはなく、淡々と描かれる食卓の1コマ。それは、あくまで「日常の」食事なのです。地に足が着いた食事だと言ってもいいと思います。
料理の本然は、競うものでもないし、意気込んで保護しようとするものでもないし、無理矢理アイデアをひねり出して工夫するものでもない。ましてや政治の道具にするものでもない。そういうことを考えるのは勝手だけど、そんなことばかり考えて食べるご飯が美味しいわけがない。歓談しながら食べればいいじゃない。

この漫画の料理は、本当になんでもない日常の1コマ。料理をすることが趣味の人間が、美味しくバランスのいい食事を作ろうと気負わず衒わず作ります。
作られた料理は高級でもないし華美でもない。日常の中に当たり前にあるいつもの夕食。でも美味しい。そんな料理と一緒に食べてくれる人がいれば、普段の食事なんてそれで十分なのだと思います。というか、それが最高だと思います。



主人公はゲイだけど、いわゆるBL描写は特にないです。行動描写はせいぜい親密な男性友人どまり。その手の話が苦手な人でも、問題なく読めるかと思います。
それでも話の展開で当然、マイノリティとしての同性愛の苦労や悩みは描かれるわけで。個人的にトランスジェンダー、トランスセックスなどに最近興味があるので、その点でもなかなか興味深いです。


ちなみに第一回マンガ大賞2008ノミネート作品です。この作者の作品は他にも二作品ノミネートされていて、第一回にしてむこうしばらくは破られない記録ができたんじゃないでしょうか。
個人的な感触としては、この作品は確かに面白いけれど、そういう風な大賞にノミネートされるのはなんか違うんじゃないかなぁと思っています。『大奥』がノミネートされるのはわかるけど(『フラワー・オブ・ライフ』は未読)、この作品にはなんとも言いがたい違和感が。なんなんでしょね。よくわかりません。単純に、まだ一巻しか出てないから、というのは大きそうな気もしますけど。
ま、そんなもんだから、この作品が最低得票数というのは納得できる感じです。もちろんこの作品や、大賞の『岳』の面白さを踏まえての話ですよ。

ちょっと料理を始めてみようかなと思っている人にもお勧めです。料理と食事の楽しさを教えてくれる作品ですよ。








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