ポンコツ山田.com

漫画の話です。

雑記

『正反対の君と僕』身体感覚の言語化による強い共感の話

先日6巻の発売された『正反対の君と僕』。正反対な君と僕 6 (ジャンプコミックスDIGITAL)作者:阿賀沢紅茶集英社Amazon 1巻の帯に「真逆な2人の共感ラブコメディ」の惹句があるように、登場人物たちの心理描写、というよりは心理の言語化が巧みで、それが…

『葬送のフリーレン』雪山手ぶら一人旅で気づいた、アニメと漫画で違う想像の余地の話

面白いぞ『葬送のフリーレン』アニメ。「葬送のフリーレン」Blu-ray(Vol.1 初回生産限定版)種﨑敦美Amazon ケルティックなBGMがマッチしているのが意外で、20~30年前にちょっとケルトミュージックブームが起こったのを思い出しました。エンヤとか。 そ…

『葬送のフリーレン』「ヒンメルはもういないじゃない」人類と魔族を分かつ死者への思いの話

正月の暇に飽かして『葬送のフリーレン』第1期を一気視しました。葬送のフリーレン(1) (少年サンデーコミックス)作者:山田鐘人,アベツカサ小学館Amazon 特に日常パートは、原作のシンとした雰囲気を活かしている、いいアニメ化ですね。 ところで、放送以…

『2.5次元の誘惑』コスプレ衣装を作る動機の言語化とその意味の話

今年のアニメ化も決定している『2.5次元の誘惑』の最新刊。2.5次元の誘惑 19 (ジャンプコミックスDIGITAL)作者:橋本悠集英社Amazon 19巻で一番好きなコマはこれでした。 (p26) ひとり脚が上がりきってないマリ姉ェ…… アリアの脚だけ筋肉質なのもいい…

『BLACK LAGOON』「信用」と「信頼」の違いと、「頼」るロックの信念の話

メリークリスマス!! 閑話休題、先日発売された『BLACK LAGOON』13巻。前巻から2年以上空いていますが、それ以前がよっぽど空いていたので、むしろ早いと思ってしまいますね。不思議不思議。ブラック・ラグーン(13) (サンデーGXコミックス)作者:広江…

『好きな子がめがねを忘れた』自信がなくて変化が怖い二人と、「そのままのあなたでいい」と祝福する二人の話

アニメが始まり、最新刊である11巻も発売された『好きな子がめがねを忘れた』。好きな子がめがねを忘れた 11巻特装版 アンソロジー小冊子付き (デジタル版SEコミックスプレミアム)作者:藤近小梅スクウェア・エニックスAmazon 前巻にて晴れて両想いになった…

『正しくない先輩』の正しくない物語で描かれる平熱の正しくなさの話

ジャンプ+にて7/17付で配信された読み切り作品、『正しくない先輩』。攻めた読み切りを数多く配信しているジャンプ+ですが、本作の攻めっぷりはかなりのもの。なにが攻めてるって、まさにその「正しくなさ」。 shonenjumpplus.com 「先輩」が大学を卒業して…

『君と宇宙を歩くために』違くて同じ人間の、違うけど同じ感情の話

今回も、『君と宇宙を歩くために』のお話。 comic-days.com 主人公の一人である宇野は、作中で明言はされていないものの、自閉スペクトラムと思われる、「ちょっと人と違うところ」のある高校生男子。「記憶することが得意」だけど、「沢山のことを同時に行…

『君と宇宙を歩くために』『税金で買った本』宇宙の中で自分を繋ぎとめる、言葉という命綱の話

2023年8月号のアフタヌーンで掲載された、泥ノ田犬彦先生の『君と宇宙を歩くために』。 comic-days.com 高校生が宇宙を目指す的な『宇宙兄弟』みたいな作品かなと思ったらあにはからんや、「”普通”ができない正反対な2人の友情物語」という惹句にあるよ…

『さよならミュージアム』描かれる眼と描かれない目の意味の話

となりのヤングジャンプに掲載された読み切り作品、岩井トーキ先生の『さよならミュージアム』。 tonarinoyj.jp 美術部員の主人公・空木(うつぎ)は人付き合いが悪い。親とも部員とも顧問とも最低限の口しかきかず、ただ、自分がもっとも美しいと信じるもの…

『まどろみと生活以外のぜんぶ』rcaの描く、境界が融け合う安らぎと寂しさとエモさの話

今日は珍しく、というかこのブログで初めてだと思いますが、成年向け作品についてのお話ですので、あんまり生々しい話はしませんが、18歳未満のお子様は回れ右してね。

『違国日記』47.5話 無音の世界の秘密の話

先日新刊の発売されたヤマシタトモコ先生の『違国日記』。違国日記(10)【電子限定特典付】 (FEEL COMICS swing)作者:ヤマシタトモコ祥伝社Amazon 新刊を読んで一番印象に残ったのが、ストーリーではなく、47.5話冒頭の表現。えみりが喫茶店でノイズキ…

『ハクメイとミコチ』好きなモノを好きと言い、身にまとうことの嬉しさ楽しさの話

年に一度、毎年1月のお楽しみといえば、そう、『ハクメイとミコチ』の新刊発売。ハクメイとミコチ 11巻 (HARTA COMIX)作者:樫木 祐人KADOKAWAAmazon 巻を重ねるごとに、登場人物やエピソードも重なっていって、面白さも重層的になっていく本作。たとえば最…

『ぼっち・ざ・ろっく』下手な演奏を下手に演奏できるアニメの説得力の話

今更ながら、ABEMAで『ぼっち・ざ・ろっく』のアニメを見てます。 bocchi.rocks 現時点で9話まで鑑賞。原作を2巻まで読んでからのことなので、ストーリーはすべて承知なんですが、漫画とアニメの表現の違いから生じる印象を色々感じてます。 その中でも一…

『メダリスト』言葉を与えることによる動作の意識化と、世界の細分化の話

いまアフタヌーンで一番楽しみな作品こと『メダリスト』。メダリスト(7) (アフタヌーンコミックス)作者:つるまいかだ講談社Amazon 7巻では、司をケガさせてしまったことからくるイップスを乗り越え、4回転サルコウという唯一無二ともいえる武器を手に入…

『隣のお姉さんが好き』「好き」という名のクソデカ感情と、言葉による感情の腑分けの話

2巻発売の『隣のお姉さんが好き』。隣のお姉さんが好き 2 (ヤングチャンピオン・コミックス)作者:藤近小梅秋田書店Amazon 表紙の心愛は、整った笑顔だけどどこか遠さを感じる1巻から、2巻では焦りや動揺がにじむもそれゆえに近さも感じられるものになり…

『HUNTER×HUNTER』カキン帝国についてあれこれの話

ハンタの私的まとめその2。今日はカキン帝国について。HUNTER×HUNTER モノクロ版 37 (ジャンプコミックスDIGITAL)作者:冨樫義博集英社Amazon カキン帝国前史。 「超古代国」だけど、「30年位前『歴史上最も静かな革命』と言われた真林館事件を機に帝国社…

『HUNTER×HUNTER』カミーラの念能力についてあれこれの話

『HUNTER×HUNTER』が帰ってきたぞーっ!!HUNTER×HUNTER モノクロ版 37 (ジャンプコミックスDIGITAL)作者:冨樫義博集英社Amazon 早速新刊を読みましたが、文字が多いよ!難しいよ! ということで、最新刊だけでなく暗黒大陸編から読み返して、よくわからなか…

『2.5次元の誘惑』創作と、引用・パロディのオタク仕草と、孔子・芭蕉の話

新入生・華翼貴を迎えたコススト編も最新話で完結した『2.5次元の誘惑』。 普段なら単行本を待つところですが、ジャンプ+で読んだ最新話で少し気になったフックがあったので、今日は簡単にそれを。 shonenjumpplus.com 「オタクは生産的な趣味なのか」という…

『メダリスト』クセの染み込んだ体と自由な心の話

先日6巻の発売された『メダリスト』。メダリスト(6) (アフタヌーンコミックス)作者:つるまいかだ講談社Amazon 難易度の低いジャンプを構成に入れているために高得点が望めないと思わせるいのりの演技が、実はGOE(スキルレベル)を上げる方向で構成を…

『ブランチライン』欲望の素直な肯定と身軽で気軽な姿の話

新刊の出ました『ブランチライン』。ブランチライン(4)【電子限定特典付】 (FEEL COMICS swing)作者:池辺葵祥伝社Amazon 4巻を読んで感じたのは、この作品は人の素直な欲望を肯定してくれるんだな、ということでした。 どこで感じたかと言えばいろいろあ…

『シン・ゴジラ』『シン・ウルトラマン』コミュニケーションが生むドラマと、私が求めた/求めていなかったものの話

昨日は勢いのままに『シン・ウルトラマン』の感想を書き殴りましたが、端的にまとめれば、「損をしたとは思わないけど、期待していたものではなかった」というものです。 じゃあその私が期待していたもの、『シン・ゴジラ』は百億万点だけど『シン・ウルトラ…

『さよなら絵梨』単調なコマ割と期待を裏切られるカタルシスの話

『ルックバック』以来、再び長編読み切りを上梓した藤本タツキ先生。 200pオーバーという大ボリュームでありながらページを送る指が止められず、更新された日曜深夜にあっという間に読み切ってしまいました。 さて本作、二転三転するストーリーや、どこ…

『タコピーの原罪』あなたを一人にしない、ハッピーを生む「おはなし」の話

再び『タコピーの原罪』。今日は「おはなし」についてのお話。タコピーの原罪 上 (ジャンプコミックスDIGITAL)作者:タイザン5集英社Amazonタコピーの原罪 下 (ジャンプコミックスDIGITAL)作者:タイザン5集英社Amazon この物語のトリガーにして傍観者であると…

『タコピーの原罪』タコピーの「原罪」とはなんだったのか、あるいは善悪の意識の萌芽の話

原罪。それは、祖であるアダムが犯したために、その子孫である人間が生まれながらにして負っている罪。 キリスト教を元とするこの言葉をタイトルに関する問題作が、先ごろ完結巻を刊行しました。タコピーの原罪 上 (ジャンプコミックスDIGITAL)作者:タイザン…

『その着せ替え人形は恋をする』連写ポートレートと五条への同一化の話

アニメも評判のまま幕を閉じ、新刊も出た『その着せ替え人形は恋をする』。その着せ替え人形は恋をする 9巻 (デジタル版ヤングガンガンコミックス)作者:福田晋一スクウェア・エニックスAmazon 9巻では、太った海夢、一眼レフを買った海夢、そのカメラでレイ…

『メダリスト』『3月のライオン』敗者と勝者のメンタリティの話

今一番アフタヌーンで推してる作品『メダリスト』。メダリスト(5) (アフタヌーンコミックス)作者:つるまいかだ講談社Amazon 最新刊では全日本選手権の予選にあたる、ノービスAの中部ブロック大会に出場します。 さてこの作品、しばらく前から羽海野チカ…

『2.5次元の誘惑』意識される/目を逸らされる過去の話

13巻現在で、8名ものヒロインが登場している『2.5次元の誘惑』。2.5次元の誘惑 13 (ジャンプコミックスDIGITAL)作者:橋本悠集英社Amazon リリサ。 みかり。 まゆら。 753。 ののぴ。 アリア。 まりな。 夜姫。 ヒロインというか、ちゃんと内面の描…

『2.5次元の誘惑』夜姫とののぴ 過去の受容と未来への一歩の話

最新13巻で、冬コミ編も一段落した『2.5次元の誘惑』。2.5次元の誘惑 13 (ジャンプコミックスDIGITAL)作者:橋本悠集英社Amazon 冬コミ編で本格的に登場したコスプレ四天王の一人である夜姫ですが、当初は炎上上等の承認欲求拗らせウーマンかと思われました…

『アオアシ』思考の省エネ化と、アシトと北野の俯瞰の目の話

高校ユース決勝。青森星蘭戦がついに決着を迎えた『アオアシ』27巻。アオアシ(27) (ビッグコミックス)作者:小林有吾小学館Amazon 最新刊の発売日ですし、激戦の結末をここでは書きませんが、主人公アシトの今までが集約した結果だったとだけ言っておきま…